ピースクラフト

□思いつきハイライト
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【夢のつづき】
ボクは夢を叶えた。小説家になる夢も、タップダンサーになる夢も、声優もスタントマンも全部。
そう。理想の女性も家庭も手に入れて、その上で彼女はいった。
「夢のつづきを聞かせて」と。
そう。何のためにここまでしてたんだっけ。
彼女はかつてボクにしたプロポーズを、ここまできたボクにもう一度いったのだった。
ボクはたしかに理想があって夢を叶え続けていた。
…でも、忘れた。
理想と夢は別物だ。理想は目的であり、夢は過程なのだ。
小説家になったのもスタントマンになったのも、彼女と一緒になったのも夢だったはずだった。
…では肝心の理想って?
今彼女の手を握り思うのは、
…ひょっとしたら手に入れてるのか?
いや、たしかに手に入れたともいえる。だけど、彼女と一緒に見たいものがあったはずだった。
…だってあの時。
プロポーズをされた時、告白返しをした記憶があるから。
…その時何て言ったんだっけ。
思い出せたらきっとまたスタートだ。
リスタートなんて人生じゃよくあることだから。

昔、ボクがまだ何の夢も叶えていなかった頃、彼女に
「夢のつづきを聞かせて」
そうプロポーズされてから
「有言実行ってワケじゃないけど、いったからにはやらなきゃダメだよ?」
と釘も刺された。
勿論言われなくてもそのつもりだったし、
「    」
「それから」
ボクが何かをいう前に彼女がセリフを被せてきた。
「無言実行。
なかなかできることじゃないよね。
でもホイホイ夢をバラさない方がいいと思うよ?」
ボクがタイミングを外してフリーズしていると、
「楽しみがなくなっちゃうしね」
とウインクした。
たしかにその通りだった。
夢なんて別にカッコつけるためにやっているワケじゃない。
でも、黙ってやった方が周りを驚かせることはできる。
…その驚きを楽しみにしてる人もいるんだしね。
だけどボクが人にバラしてるのは、
…一人では無理だとわかってるから。
そう。人は一人では何の力も発揮しない。
できても手は確実に足りなくなる。
だからホイホイ話す。
「一緒にがんばろうね」
手を差し伸べる彼女。
彼女はそれもわかった上でそういってくれていた。
あの時ボクは、初めて彼女と一緒にいくと決めたんだ。
 

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