anothr story
□奇妙な夢
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枕元に置いた携帯が私を叩き起こした。
手で携帯を探り当て、通話ボタンを押し、相手が話す内容を聴く。
寝ぼけた頭が急速に覚醒していく。
「はい。わかりました」
最後にそう言って電話を切った。
ベッドから抜け出すとクローゼットの中からスーツと防弾チョッキ、ホルスターに収まったリボルバータイプの拳銃を取り出す。
普段と変わらない慣れた手付きで着用していく。
防弾チョッキや拳銃が必要な危険なことなんてないのだが、新人の時に心細くてした癖が未だに残っているのだ。
肩にかからないくらいの短い髪を手で溶かし、買い置きのアンパンをキッチンから取るとそのまま玄関へと向かった。
このアンパンも私が新人の時の勝手なイメージから毎日飽きもせずに食べている。
扉に鍵を閉め、別れを告げる。
次にここに帰るのは二日先になるかもしれない。
「おはようございます。刑事さん」
「おはようございます」
そこには茶髪の男が立っていた。
お隣さんの曽田さんはチャラ男という名にふさわしい人だ。
「今日も仕事ですか?」
「えぇ」
「向井さん達も帰って来てないのに大変ですね」
「えぇ」
向井というのは私の家に一緒に住んでいる同僚の名だ。
恋人ではない。
同じく下宿人はもう一人野々村というのもいる。
住まわせている変わりに借金返済に携わっている。
「それでは私は失礼します」
「はぁい。いってらっしゃい」
軽く手を振る彼に会釈して私は車に乗り込んだ。
キーを差し込むと愛車が唸りをあげる。
そして、私は仕事へと向かった。
言い送れた。
私は佐藤萩(サトウ ハギ)
刑事だ。