anothr story
□借金と地獄
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白い部屋。どこまでも広がっているようだ。
床もそうだ。白すぎて俺の足は床ではなく宙にあるみたいだ。
そんな場所で俺はボケーと座っていた。真っ白な長イスがあったからそれに座ってた。ほら、駅にあるあんなイス。
俺がどうしてここにいるのか、ここがどこかなんて知らない。気付いたら俺はここに座っていて、
『丸山 花さん。前へお進みください』
看護婦さんみたいな爽やかな呼び出しを聞いて、
『へ?あ…』
隣りに座った奴が突然消えるのを眺めていた。今消えた婆さんがたぶん"丸山 花"なんだろう。
婆さんが消えて俺一人になった。
さっきまで一人消えたら別の一人が座っていたけど、いつになってもこなかった。
白い部屋に飽きて目を閉じると瞼の裏も白で眠れない。退屈過ぎてしょうがない。
子どものように足をぶらぶらと振っていると、声が俺を呼んだ。
『斉藤 俊也さん。前へお進みください』
言われた通り前に一歩踏み出すと俺は真っ逆様に白へと落ちていった。
落ちた先は赤い絨毯の上だった。落ちたって言っても高さはなかったようだ。階段一段分くらい。"落ちた"って言わないような高さ。
でも、"落ちた"先には色があった。さっき言った赤い絨毯、黒い壁、黄色い模様のある立派な柱、金の机とそれに座る紫の着物をきた10mくらいあるんじゃないかってくらい馬鹿でかいおっさん。
『斉藤 俊也』
地を揺らすような低い声でおっさんが言った。
『……』
呆気にとられている俺におっさんの極太の眉毛がピクリと動いた。
『返事をしろ!斉藤 俊也!』
『はい…』
怒声にマヌケな声が出た。
返事をすると同時におっさんの机の上の本が一人でにバラバラとめくられる。
そして、ある1ページで止まった。
『斉藤 俊也。死因"転落死"。相違ないか?』
『…はい』
俺は斉藤 俊也(さいとう としや)。
12月12日の今日、死んだ。