anothr story

□pay envelope
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寂れた街の大通りに人がいた。
石畳の上に立つ二人以外は誰もいない。
隔絶されたような世界に二人は十分すぎる程の間合いを取って対峙していた。
「…これを渡す気はない」
静かな言葉は無音の街に響いた。
相手の無言の問いに答えたのは、短髪の中年の男だった。
ハイネックのセーターに黒いパンツ姿だが、その腰に刺した刀だけがどこか異質だった。
「渡す気など訊いていない」
対峙していたもう一人が答えた。
黒い髪の女は若く鋭い眼光で男を見つめていた。
黒のロングコートの袖口から両の手に銃が滑り落ちる。
大口径自動式RN510の安全装置が外された。
男も刀の束に手を添える。
「奪う、か…」
「ああ」
男が腰を低くし、抜刀のしせいに。
女も腕を真直ぐに男へと向けた。
風が二人の間を流れっていく。
始まりは突然やってきた。
銃の引き金が引かれ、男が刀を抜き、弾を刀身で弾く。
と同時に踵が石畳を蹴り、疾風の速さで女に迫る。
容赦無く銃弾が放たれるが、全て弾かれ、男の疾駆は止められない。
男の横薙ぎの一線を身を沈めて回避。
横転し、返しの刃を免れた女は更に発砲。
右手で撃ちながら、左手で筒状の弾倉を放り投げ、右の銃に叩き込んだ。
弱まった攻撃を男は見逃さなかった。
すぐに間合いを詰める。
袈裟斬りを後方へ跳び回避するが、切っ先はすぐに反応し、突きの形にかわり女の胸へと向かった。
それを銃の側面で受け止める。
「どうあってもこれは渡さない」
男が突きに力を入れ、銃を弾く。
反動で女は後方に崩れるがその勢いに乗り、地面を手で掴み更に後方へと飛躍する。
男もすぐに女を追った。
地面を蹴って後ろへと跳びながらも銃弾は的確に男を狙う。
弾丸を弾いた男は追撃を放つ。
女はこの間合いでは不利と判断左手で男を牽制しながら、右手でコートのポケットの中身を掴み、止め金を口で抜いた。
危険を感じた男は即座に離れるが、それに向けて銃弾を浴びせ右手の物を放った。
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