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□vista?
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叫び声をあげ、豪華絢爛たる黄金の扉が開くの。
あたくしと四十四番目のおにいちゃまは遊んでいた人喰い玩具から目を逸らし、そちらに目を向けたわ。

大おじいちゃまの自室に入って来たのは二人の殿方。

まあ、あの方々が大おじいちゃまが言っていたサーカス団の方ね。
大おじいちゃまの大切なお客様。
食材でも玩具でもない殺してはいけない方々。

あたくしは慌てて立ち上がり、お二人方に駆け寄るとスカートの両端を摘み上げ、深々と頭を下げたわ。


「いらっしゃいまし。サーカス団のおにいちゃま方。あたくしはあたくしと申しますわ。お好きにお呼び下さいませ。あ、そして、あちらは四十四番目のおにいちゃま。お見知りおきを」


レデイたるもの礼儀は美しく。
顔を上げ、あたくしは歓迎の意を込めて精一杯の笑みを浮かべると、もう一度頭を下げるの。

一方の方にはふん、と鼻であしらわれてしまいましたが、もう一方の方はにこり、と微笑んで下さいましたわ。

まあ、なんてお美しい笑みなのかしら!


「ンヒ?めし?」
「あら、違いますわよ。四十四番目のおにいちゃま」


いつの間にかあたくしとお二人方の間に現れた四十四番目のおにいちゃま。
相変わらずお速いわ。


「くうだめ?」
「駄目ですわ。お客様ですもの。昨晩、大おじいちゃまがお言いになったでしょう?」
「ンヒヒヒヒ、おぼえてね」


四十四番目のおにいちゃまはお二人方に血濡れた手を真っ赤に伸ばす。
まあまあ、ダメよ!いけないわ!
喰べてはいけないのに!

あたくしはお二人方の無惨な姿を想像しながら、眼を瞑ったわ。
さようなら、素敵なサーカス団の方々。


「やめ…ろ゛…」


ぴしゃり、と稲妻よりも激しく四肢を裂かれるより痛々しい声。
眼を開ければ、今まで黙ってどこかを見ていた大おじいちゃまがこちらを見ているの。


「ごぢ…ら…へ…」


その言葉を訊きお二人方は大おじいちゃまの方へと歩む。
けれど、杖を持つ方はこちらを鋭く睨みながら歩んで行くの。

あたくしはそんな睨むおにいちゃまに満面の笑みを浮かべたわ。


「お話の邪魔は致しませんわ。ねえ、四十四番目のおにいちゃま?」
「うまそ」
「我慢して下さいまし。また腑を晒されて日乾しにされてしまいますわよ」


あたくし達は再び黄金の床に座るとお三人方の会話を子守唄に、また人喰い玩具で遊ぶ事にしたわ。
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