◆突発◆

□突発
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俺はいま酷く面倒くさい任務をあてがわれている。

きっと上忍の誰もが嫌がって、誰もが俺を褒める振りをしながら押し付けたに決まってる。

そんなどうしようもないような任務だ。

しかもいつ終わるかも分からない無期限任務。

明日終わるかもしれないし、死ぬまで続くのかもしれない。そりゃあ誰もが嫌がるのも道理だ。

しかもその内容だって……





『has not melted his ice yet』







12年前恐ろしい“天災”が木の葉の里を襲った。

色んな手を尽くしたが結局は歯が立たず、当時の火影が命を賭けてその“天災”を封印する事で何とか里は守られた。

里と、生き残った全ての人間の心に大きな爪痕を残して…───



今回俺に与えられた任務は、その“天災”の監視だ。

再び“天災”として里を襲うことの無いように、真っ当な人間に育つように、下忍の担当上忍として指導に当たる事になったのだ。

資料によれば成績は下の下。

これでよく卒業できたものだと正直呆れた。

落ち着きが無く、協調性もイマイチ。大雑把で、騒々しくて、悪戯好き。

ハッキリ言って俺の嫌いなタイプそのものだ。

そうでなくとも“天災”という事で皆から敬遠されているのに、それを差し引いても面倒を見るには厄介な相手であることは間違いない。

考えれば、考えるほど憂鬱になる。

今まで任務につまらないと不満を感じたことはあっても、こんなにやりたくないと嫌な気持ちになったのは初めてだ。

もちろん不満があろうと任務はこなす。

それは変わらない。




昼間は担当上忍として指導。

夜は暗部時代の隠密技術を応用して監視。また時々は担当上忍として訪ねて行く事もある。

とにかく面倒くさい事この上ない。

実際付き合ってみて、その“天災”の面倒くささは資料を読んで想像していた程度を遥かに凌ぐ。


言う事は素直に聞かない。

指示した事もマトモに出来ない。

ほったらかせば構えとせがむ。

他にばかり構えば拗ねるか邪魔して来る。


これだから子供は嫌なんだ。

しかも誰もが嫌がったのを押し付けられたと思えば、なお嫌になる。


──…いつものように大きな溜め息をつくと、俺の目の前に立っていたナルトの肩がビクリと揺れた。

どうやら説教の最中に思考が飛んでいたらしい。

目の前にはうな垂れて立つナルト。

少し離れたところで心配そうに此方を伺うサクラとサスケの視線がうざったい。

俺はもう一度小さく溜め息をつくと、ナルトの頭をぽんとなでた。確か仕事の手際が悪いとか何とか言ってたんだったなぁ、と思いながらナルトに背を向ける。

もう時間も遅い。

ナルトに説教するよりも、ナルトはサスケ達の手伝いをさせてナルトがやっていた分は俺が済ませるほうが速いだろう。

「こっちはもう良いから、あっちでサスケ達のほう手伝っておいで」

ナルトだってそっちの方が楽でしょ?

そう言った方がホッとするでしょ?

「で、でも…オレっ…」

なのに、なぜかナルトは反論しようとした。

俺が面倒くさいな…と思いながらそんなナルトを見下ろしていたら口をつぐんでしまったけれど。

「早く、あっち済ませておいで?」

俺がニッコリと笑うと、ナルトはまだ何か言いたそうだったけれど身を翻してサスケ達の方へと走っていった。

そう、

そうやって素直に言う事聞いていれば良いのに。




子供の言い訳なんて下らなくて聞きたくないんだから。

他愛の無いおしゃべりだって真っ平だ。

それがどうしたとしか思えない。

そんな事で何が楽しい?

何が面白い?




『で、でも…オレっ…』

少し、瞳が潤んでいた。

泣けば良いのに、と思った。

あの澄んだ綺麗な蒼から零れる涙も、きっと綺麗だろう。

それを見れば、

少しは俺の気持ちも晴れたかもしれないのに。



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08.05.16
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…ただの酷い人になっちゃった……orz
こ、これからです。
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