◆突発◆

□突発
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それは、フッと自然に耳に入ってきた。

近くでの話し声だという事もあったし、何より、出てきた名前が自分に近しい人間のものだったら、反応してしまうのも仕方が無いだろう。

振り返りはしなくとも、ついその会話に耳をそばだててしまう。

「私、カカシ先生に修行に付き合ってもらうんだ〜」




『優先順位』






そう、言ったのは同じ班員で、つまりナルトと同じくカカシの生徒であり部下であるサクラだ。

「え〜、本当に?!カカシ先生ってば忙しいんじゃないの?」

無理やり頼んだんじゃ…なんて冗談めかして言っているのは、サクラの親友、いのだ。はっきりとは聞こえないが、オドオドした声も聞こえるから一緒にヒナタも居るらしい。

ワイワイ喋って楽しそうだ。

それとは対照的に一人でぼんやりと時間をつぶしてる自分に、ちょっと溜め息が漏れる。

何をしているのかと言われれば、何もしていない。


ただ、待っている。




会いたいのに会えないその人の名を、

しかも会う約束をしたという話を、

聞きたくなんて無いのに、どうしても耳が捉えてしまう。

「だってカカシ先生に聞いたら良いって言ってくれたもの」

サクラはそう言っていのの言葉を退ける。

実にあっさりと、キッパリと。

何が悪いの、とでも言いたげな。



カカシにとってサクラもナルトも生徒であり部下、という点では同じだ。

どちらが上でも下でもない。

だからカカシがどちらに修行を付けようとカカシの勝手であって、別段変なわけでも、贔屓なわけでもない。ごく自然な、当たり前の事だ。

だけど、それとは関係ないと分かっているけど思うこともある。

分かっていても、思わずには居られないのだ。



自分は『恋人』なのに、と。
優先されるべきは自分じゃないか、と。



自分から会いたいとは言わないくせに、時間が空いてるならどうしてカカシの方から会いたいと言ってくれないのか、なんて自分勝手な事を考えてしまう。

でも、会いたいと言わないのだってカカシの為を思ってなのだ。



忙しい時に会いたいなんて言って、無理に時間を作らせるのは申し訳ない。

それに、会いたいって言ってくれたのに時間取れなくてごめんね、と謝られるのも心苦しい。


折角の休みは休みたいだろうに、俺の相手なんてさせて疲れさせたら申し訳ない。

それに、溜った用事を片付けるのに忙しいかもしれない。




だから、ナルトからは言わないのだ。

だから、カカシを待っているのだ。



サクラのように遠慮なく、思い切って言えば、きっとカカシは優しいから会ってくれるし、相手もしてくれる。

優しいから、他人の為に、無理をする。

無理だとは気付かせないけど、きっと何かを犠牲にする。



そう思うから、

それじゃ申し訳ないから、

言えなくて。




言えるサクラが羨ましくもあり、カカシの事も考えろよと呆れ怒る気持ちもある。


自分よりもカカシが大事。

自分はどうでもいい。

無理をするのも、犠牲を払うのも、我慢するのもカカシじゃなくて自分がいい。

例えばカカシが自分以外の誰かと過ごしていても、それで楽しいのなら、自分の寂しさも切なさもぐっと堪えてみせる。

自分を優先して欲しいけど、

自分を最優先にして欲しいわけじゃない。

いや、欲しいけれど、カカシが他の誰かと過ごすというのを邪魔したいわけではないのだ。

それはカカシの自由。

それに寂しいと思うのは自分勝手。




だから、言えない。

会いたくても、会いたいなんて、言わない。

ただ、待っている。












カカシ先生も、
オレが会いたいって言うの、
待ってんのかな?

オレの存在じゃなくて、
オレの行動を、
優先してくれてるのかな。


二人ともそうなら、
いつまで経っても会えないってばよ…

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08.08.19
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