◆突発◆

□突発
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「ナルトがどうかしたのか?」

そう言って、自分より年下の、同僚であり忍の先輩でもある銀髪の木ノ葉一の業師を見やった。

元暗部でもある為か、その表情から感情を読み解くのは難しい。けれど決して機嫌が良いわけでは無いというのは、表情というよりもその身を包む雰囲気で見て取れる。

そんな不機嫌な男が何度となくナルトに視線をやるのだ。


先生というほど優しい視線では無いし、

監視というほど厳しい視線でもない。


自然と、無意識に目で追っている……ように、俺には見えた。





『How absurd!』







今日は俺、猿飛アスマ率いる第十班と、カカシ率いる第七班が合同で任務に当たっている。と言っても内容事態はごく簡単な除草作業なのだ。

ただ範囲が広すぎる為に合同任務となっただけの話だ。

つまり俺やカカシは率直に言えば暇ということになる。

もう少し小細工が必要な任務だったら誰か質問にも来るだろうが、除草作業じゃそれもない。

手持ち無沙汰だからと言って俺はカカシのように本を読む気にはならないし、やる事と言ったら昼寝か瞑想か。ガキどもの草むしり姿なんて見てたってすぐ飽きるしな。

そう思って瞳を閉じようとしたら、カカシの視線がナルトを追っているのに気付いたってワケだ。

はじめはちゃんとやってるかと先生として眺めてるのかと思った。

だけど、どうもおかしい。

見た感じナルトは多少おしゃべりしているが、作業自体はがむしゃらに頑張っているように見えた。そう何度も見る必要があるとは思えない程度の熱心さは、俺にはすぐに見て取れた。

なのにカカシは何度もナルトを見るのだ。

だから、率直に言ってみたのだ。

「ナルト?何で?」

やはり無意識なのか、それともしらばっくれているのか、カカシは意味が分からないとでも言いたげな視線を向けてくる。

無意識ならばもう少し突っ込んで聞いてみるのもいい。

だがしらばっくれているのなら、あんまり突っ込めば薮蛇だ。

さてどうしたものか、と思っていたら、カカシが再度『何で?』と問うて来る。しかも機嫌の良し悪しの分からないような無表情で。

「……やけにナルトを見る回数が多いな、と思ってな」

多い、というよりも今日、俺が見ていた間では2人を見た回数なんて0に等しい。見ていたとしても、ナルトに視線をやるついでに…程度だろう。

つまり無意識にしろ、意識的にしろ、何かしらナルトに強く思うところがある、

……ように見える。



さて、カカシはどう答えるか。

「手際が悪いから、足引っ張ってないかって心配でね」

案の定、ごくごく模範的な、理想的な先生像としての答えが返ってきた。

やはりこれはしらばっくれていると見るべきか。

実際、ナルトは頑張ってはいるが手際が悪いのは俺も認める。ああすりゃいいのに…とか、そうじゃないだろ…とか、突っ込みどころは多い。

だが、そうだからこそ、それを注意も指導もしないで、ただじっと見つめているだけなのは、その理想的な回答をする先生の態度としては違和感が否めない。

そんな先生ならすぐに指導に行きそうなものだしな。

「だったら指導してやれよ、『カカシ先生』?」

からかうように言ってやれば、ちらりと険のある瞳が俺を見上げた。

「自分で考える、が俺の指導方針」

「あっそ」



見ている、けど近づきたくない…?ってか。


「何度教えても覚えないんだよ、アイツは」

カカシは吐き捨てるように言う。

呆れて小馬鹿にしたような、見放したような、おおよそ優しい先生とは思えない発言だ。



それに少し興味をそそられた。

普段から飄々として、他人に興味を示さない、無関心・無頓着を地で行くこの男が、良くも悪くもこんなにも他人に心を動かされているのだ。




なぜナルトを見るのか?

それはもちろん気になるからだ。

なぜ気になるのか。

そんなのは俺の知った事じゃないけれど。




先生というほど優しい視線でも無く、

監視というほど厳しい視線でもない。




自然と、無意識に目で追っている…なんて思春期の初恋じゃあるまいし、とおかしくなってしまう。

冷たい態度も好きな子苛めか?

自分のそんな馬鹿馬鹿しい想像に笑いがこみ上げてくる。

確かにカカシの態度はそう取れない事もないけれど。

だって、あのカカシが、こんな子供に?






………いくらなんでも、

こんな想像は馬鹿馬鹿しい、だろ?

なぁ?

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08.08.21
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