◆突発◆
□突発
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ナルトの言葉がきっかけだった。
ナルトの表情がきっかけだった。
ナルトの行動がきっかけだった。
俺は分からなかったし、気付きたくもなかったのに、ナルトが俺に勝手に押し付けた。
そうだ。
きっと、そうだ。
そうでも思わなければ、やってられない。
『the beginning and the end』
ナルトの監視任務も、ある程度ナルトの行動範囲を覚えてしまえガ極めて単調な任務となった。
時々、里の人間から嫌がらせを受けているようではあったが、それを止めるようには言われていないから、任務には関係ない。俺自身も助ける気はない。
見てるだけ、だ。
それは酷く退屈で、そもそも任務自体を嫌だ嫌だ面倒だと思っていたのだから、益々その任務を厭うようになったのも自然の流れだった。
だから、俺はその任務を影分身に任せる事にした。
そのままカカシの姿ではいつ誰の目に留まり、無駄にチャクラを使う程に任務が嫌なのかと問題視されるのは目に見えている。
だから、
姿を変えて、
本体が眠っても消えないように細工をして、
俺の意識があっては影分身自体も任務を厭うだろうと記憶も弄り、
そして、
ただの猫を作り上げた。
下手に誰かに化ければ何かの拍子にぼろが出ないとも限らない。しかし、いっそ猫ならば誰も問わないし、1匹や2匹増えようが減ろうが気に止める事もない。
後は報告日の2週間後に術を解いて、影分身の記憶を受け取れば良い。
何も知らずに『金』を気に入っていた。
独占欲すら、速いうちから芽生えていたのだろう。
月夜で笑い会うナルトとサスケを見たときの、あの不思議な気持ち。
『また、今度な?』
そう言ったうみのイルカに締め出された夜の屈辱感。
気付けば、不意に口を出るほどに“好き”になってた。
『カカシ先生が、オレを好きになってくれれば良いのに…』
猫の俺を抱きしめながら呟いたナルトの声が切なくて、胸が締め付けられるような気がしたあの夜。
『金』が、オレを好きになれば良いのに……──自然とオレはそんな事を考えていた。
そう、本来は…、ただ面倒な任務を押し付けただけだった。
深い意味などなく、ただの道具として作り出しただけだった。
その記憶が俺にこれほどの動揺を誘うなどとは思ってもみなかった。
その意思が、感情が、本体の感情をも凌駕するなどありえないことなのだ。
記憶を弄ったとはいえ、所詮は俺自身。
本来の俺と、そんなにかけ離れた感情を持つわけも無いし、それは思考回路とて同じ事。
もちろん過去の記憶によって、楽天的にも悲観的にもなるだろうが、本質というか本音というものは早々変化するものでは無い…と思う。
では、影分身の感情は俺自身の感情か?
ナルトに関する余計な情報を取っ払い、素直にナルトを見てみれば、俺はナルトに好意を持つということなのか?
記憶を持つ本体の抱く感情。
記憶の無い影分身の抱いた感情。
その両方の感情が交じり合った、今の俺の感情。
もう、今までの俺ではいられない。それまでとは違う気持ちが確かに心に存在しているのが分かる…。
こんな事なら影分身など作らなければ良かった。
そうしたらこんな感情など抱かなかった。
ナルトの言葉なんて聞かなくて良かった。
ナルトの表情なんて見なくて良かった。
ナルトの行動も態度も、何も知らなくて良かったのに。
俺はこれまで通りナルトに対して大した感情も抱かずにいて、それでよかった。なのに、ナルトが俺に勝手に押し付けた。
そうだ。
きっと、そうだ。
だから、責任を取ってもらわなければ。
このどうしようもないモヤモヤした落ち着かない気持ちを、俺が納得できるようにしてもらおう。
それが出来ないなら,はけ口でも良い。
あいつに責任を取らせれば良い。
だって、こんな気持ちになってるのはあいつの所為なんだから……
そうでも思わなければ、やってられない…──。
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08.11.13
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