◆突発◆

□突発
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あの“はたけカカシ”が本命を作ったらしい。

そんな噂が上忍の間でまことしやかに流れている。もちろん上忍が噂をすれば中忍が食いつき、中忍が噂すれば下忍も……とその噂の伝播するところは留まるところを知らない。

単に噂好きの者。

カカシに憧れて、真相が気になって仕方が無い者。

カカシを妬んで、弱みが無いかと探りを入れようとする者。

色んな人間がその噂をして、広めていく。




『rumour』





その日は私、夕日紅は上忍待機所で待機を命じられていた。

下忍を受け持つ上忍も、勘が鈍ってはいけないと周期的に通常任務があてがわれる。今日はその日だった。

なんと今日は珍しく、噂のはたけカカシと組む日だった。

待機所に入れば先に来ていたカカシが軽く会釈をして、またいつもの如何わしい本へと視線を戻した。昔はこうじゃなかったのに、と思わずには居られない。


昔はクールで一匹狼。
誰にも近寄らないし、近寄らせない。


そんなオーラが体中から出てた。

でも四代目やオビトと過ごして少しはマシになって良かった、とリンと一緒に笑ってた日々が懐かしい。今じゃ人前で堂々と年齢制限付き小説を広げられる程オープンな人間になりました。

……って、全然良い事じゃないけど。

でも昔はピリピリしてて、それこそ『恋人がいる』だの何だの、噂にする事さえも躊躇させるほどだった。今だって結構きついけど、こんなものの比じゃなかった。

それから考えたら、今のカカシは良い傾向なのかしら?

リンが今もここに居たら、こんなカカシを見てなんと言うのかしら?

怒る?

笑う?

諦めて放置する?

……それよりも他の女達みたいに『恋人』の事の方が気になるかしらね。


「カカシ、あんた恋人できたんだってね?」

今もリンと一緒にいたんなら、こうしてリンの為にカカシの事を聞きだそうとしたのかな〜…なんて思いながら言ってみる。だって私自身は興味ないもの。

「紅までその話…?もういい加減にしてくれない?」

「あんたが聞かれてもはぐらかしてるからでしょ?」

確か噂じゃ、聞いても『居ない』の一点張り。

その割に最近帰宅時間は早い。けども家に灯りがすぐ付くわけでもなく、どこかに寄り道しているらしいのだ。

後を付けてみても、さすがに上忍。あっさりと撒かれてしまう。

じゃあどこか男女で行きそうな飲み屋か、食堂か、とその辺りを捜してみてもカカシの姿はない。もしくは恋人ではなく、花街通いかと探せどもこちらも行った様子はない。

だから誰もが想像を膨らませ、あれやこりゃとあらぬ事を話しているのだ。

「はぐらかしてない。本当に居ないから」

カカシは手元の本を閉じて、はぁ〜と大きく溜め息をつく。

「じゃあアンタ、仕事終わったら何処に行ってんのよ?」

「それは…」

カカシが言葉に詰まる。

これでは確かに怪しまれても、仕方ないわよね。

噂がもううんざりというのなら、それこそ、そこん所をハッキリさせればある程度の人間は満足して噂しなくなる。それくらいカカシだって分かってるはずなのに。

それでも言わない訳は?

言えない?言いたくない?



ふと以前、アスマと3人で飲んでた時の事を思い出した。

カカシが、眼が勝手に追うだの、他の人間と一緒にいるのが気に入らないだの言ってたから、初恋の小学生かって言ってやったんだった。でも確かその時、アスマが相手は男だとか言ってなかったっけ?

本当にそうなの?

その相手ってことなの?

だとしたらまぁ、人には大きな声では言えないかもしれないけど。

でもカカシが?

任務最優先の合理主義者の分からず屋だった、あのはたけカカシが?!

堅物で、クールで、お見合い結婚とか型にはまった恋愛しかしないだろうと思ってた、あのはたけカカシが…?!


でも絶対にそうと決まったわけじゃない。

でも、もしそうなら、今のカカシのように何もいわず話が風化するのを待つほうがいいのかもしれない。そういう話ならば言って周りが納得するとかいう問題ではないし。


…じゃあそうなの?

って言うのも、いざ本人にはすごく聞きづらいんですけど。

聞いたって答えるかどうかも怪しいし。

実際そうだ、なんて言われても私はなんて言ったら良いわけ?




やっぱり、噂は噂のままで置いておいた方がいいのかもしれないわね。

実態は見えず、想像が一人歩き。

人々を楽しませる、ある種のエンターテイメント。

「人気者は大変よねぇ、カカシ」

そういうことにして置いてあげるわ。

下手に突付くと後が怖いし、ね?

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08.11.18
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