◆突発◆

□突発
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「キスしてみていい?」

それは単純な興味だった。

あの夜、紅が言っていた事を思い出したのだ。キスが出来るか?しても気持ち悪くないか?

別にそんな雰囲気になったわけでもない。

ただ何となく、その時にふっと思い出したから言ってみただけだ。




『Kiss you』






その日はサスケもサクラも先に帰って行った。ナルトだけが相変わらず、というかもたもたと道具の後片付けをしていた。

俺も置いて帰っても良かったのだが、ま、一応上司だし。

まだ終わらないのか、と俺が溜め息をつく度にビクつく小さな背中が面白かった、という事もある。

また泣きそうな顔をしてるのかと思うと、どうしてこうも胸が躍るのか。

本当に自分は変態になってしまったのだろうか。



嫌い、だと思ってた。

見てるとイライラしたから。

誰かが側に居ると、もっとイライラする事に気付いたのには驚いた。

それに気付いたのは、自分が自然と目で追っていた事に気付いたからだ。見てるとイライラするのに、どうして目は追ってしまうのかと首をかしげた。

一人で泣いていれば良いと思った。

俺の投げつけた言葉で泣けば良いと思った。

それは、なぜなのか。



『その子とはキスできるの?』


不意に紅の言葉が頭をよぎった。

そして目の前の子供に視線を落とす。

言ってしまえば変態だと分かってた、けど、言ってみたいという興味にも駆られた。言えば、この子はどんな顔をするだろうか。

その顔を見てみたいと思った。

だから、思うままに。

「ナルト」

呼べばビクリと怯える肩。そしてナルトはまるで恐る恐るとでも言うかのようにゆっくりと振り返る。

本当に面白い…。

震える瞳が俺を映しているのが見えて、不思議と心が満たされる。

「キスしてみていい?」

言った途端、目が大きく開かれる。

元より返事など聞くつもりは無いから、ずいと一歩近付く。と、ナルトは少し後退りする。

それも面白かったけど、ここでそれをからかっていては肝心の事を試す事が出来ない。まぁ、本当はしてもしなくても良かったんだけど。

逃げるナルトを見て、せずにはいられなくなった。

ナルトが本気で逃げ出す前に腕を捕まえて、軽く啄ばむように口付けた。柔らかい唇は思いのほか感触が良く、続けて深く口付けてみる。

腕を掴んでいるとはいえ、ナルトは目立った抵抗は見せない。

それはそうか。

だって、こいつは俺が好きなんだった。俺に、自分を好きになって欲しい、とか言ってたんだったな。

抵抗はしないか。

むしろ、喜ぶのかな?



俺も、キスは嫌じゃない…か。

じゃあそれは『好き』って事なのか?

この調子ならキスのその先だって普通に出来そうな気がするし、それはそれで面白そうかと思っている自分が居る。

じゃあそれは『好き』って事なのか?

このまま強くナルトを抱き締めてしまおうかと思ってる自分が居る。

じゃあそれは『好き』って事なのか?

よく分からない、かな。



突然、ナルトが俺の肩を突き飛ばした。

驚いている間にナルトはあっという間に駆け出していた。さすがにすばしっこさはかなりのもので、あっという間に視認出来なくなる。


すぐに追おうと思った。

なのに、なぜか足が動かなかった。

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08.11.24
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