◆突発◆

□突発
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俺の腕の中にすっぽりと長なまる小さな体。

それを力任せに、まるで逃げないようにするかのように、強く抱き締めた。

抱き締めて安堵する自分に気付く。

それが現実。

好きとか嫌いとか、子供みたいに馬鹿馬鹿しいくらいに色々考えたけど、紅の言った通りだ。キスして、抱き締めて、自分がどうしたいのか気付き始めた。

今まで誰にも感じた事の無い感情が芽生えている。

ナルトに。




だけど、ナルトは、


俺の腕の中で震えていた。





『Hug』






他の同世代よりも先に上忍になったから、自然と付き合う人間は年上が多かった。

そのおかげで色々と早熟で、でも今思えば気持ちがそれに追いついてなかった。相手の言うままに抱き締めるだけで、自分は執着はなかった。

だから、いつも女の方から俺から離れて行く。

そして俺ももちろん後を追ったりはしない。執着が無いのだから当然だけど、中には“どうして?!”と怒る女も居た。

だって仕方がない。

側に居ようが居まいが何とも思わないのだから。





だけど、最初からナルトは気に入らなかった。

他の誰もこんなに嫌ったりした事は無いのに、ナルトだけは。

騒々しくて、言う事も聞かない、そんな手に負えない子供が、自分の部下で監視対象。だから“特別”に嫌なのだと思ってた。

でも考えてみたら、今まで任務対象にすら、そんな気持ちを抱いた事はなかった。

任務なら任務で仕方ないと、受け入れてきた。

なのに、ナルトだけが違った。

最初から強い感情を抱いていたのだ、無意識に。



泣けば、いいと思った。

あの澄んだ綺麗な蒼から零れる涙も、きっと綺麗だろう…と。それを見れば、イライラした自分の気持ちが治まるだろうと。

そのナルトが今、自分の腕の中で震えている。

きっと泣いているのだろうと分かっている。

オレは今、その涙を見たくないと思っている。泣かないで、震えないで、と胸が締め付けられている。

腕の力をすっと抜くと、急にナルトが動き出す。

腕から逃げ出そうとしているのだろ気付いて、また慌ててギュッと抱き締める。体の向きが変わって、今度は向き合う形になる。

ナルトの顔が見える。

やっぱり泣いていたのだ、とまた胸が苦しくなった。

何と声をかければいいのだろう?

何と言えばナルトは泣き止むのだろう?

必死に考えるのに、オレの頭の中は真っ白で何も浮かんではくれない。

そっと頬に口付けて涙を吸い取る。反対側も、目尻も両方、何度も、啄ばむように。せめて涙だけでも、と。

「…何でこんな事、するんだってばよ……」

言いながら、またナルトの瞳から涙が溢れてくる。

「…泣いてるの見てると、イライラする」

ああ、俺が泣かせているのだ…と、ますますどうしたらいいのか分からなくなる。分からないから、イライラしてしまのだ。

それに俺が泣かせているという事は、俺は嫌がられているという事なのだろう。

だけど、俺はこの腕から離したくは無い。

「どれの事?キスした事?追い掛けてきた事?抱き締めてる事?涙を舐めた事?」

「…ぜ、全部だってば!!」

瞳に涙をいっぱいためて、声を震わせるナルトが痛々しい。俺が何と答えるのかが怖いのだろう。

ナルトの望む答えを…、と思ったけれど俺はナルトの気持ちが分からない。

キスも嫌じゃないだろうと思ったのに、逃げられてしまったし。

今もこの腕を離せばきっとナルトは、また逃げてしまう。


──『カカシ先生が、オレを好きになってくれれば良いのに…』


そう言っていたのに、今はもう俺の事は好きでないのか?

もう他の誰かに心移りしてしまった?

そんなのは困る。非常に困る。こんなにも俺の気持ちを捕らえておいて、自分だけ変わってしまうなんて許せない。変わってしまったのなら、こちらに引き戻す。

何としても。

ナルトは、俺だけを見ててよ……──


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08.11.28
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