◆突発◆
□突発
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ふと見上げた時に部屋に点っている灯り。
それにホッとするようになったのはいつからだろう。
『Home』
部屋は暗いのが当たり前。人の気配もなく、しんと静かな孤独の世界。
それが当たり前。
灯りはイエローシグナル。
気配はレッドシグナル。
怖くてしばらく家には帰れない。
歳をとって、忍者学校を卒業して、新術を会得して、どれだけ自分が強く成長しようとも、その恐怖からは逃れる事が出来なかった。
他者の侵入を許した瞬間に、そこはもうオレの部屋ではなくなってしまう。
オレの居場所ではなくなってしまう。
だから初めて灯りの点った日は走って逃げた。
綺麗に準備されていた食事も見た瞬間に捨てた。
例えそれが、そうした本人の目の前であったとしても。
考えてみれば、怒られても、呆れられても、嫌われても仕方の無い事をしていたと思う。
むしろ、嫌われなかった事が奇跡に近い。
それ程にオレは拒絶したのに、その人はそうする事をやめなかった。
何度も、何度も。
いつでも、いつまでも。
オレが自分から近付くまで、ずっと。
オレが安心するまで、ずっと。
おかげで今はこんなにも暖かい気分。
早く家に帰りたいって思う、明かりがついているからこそ…。
灯りは、待っている合図。
気配は、早くおいでって急かしてる。
早く家に帰らなきゃ。
「ただいま、先生!」
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08.02.15