◆突発◆

□突発
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雲はいいよなぁ、自由で。

風の吹くまま、流されるまま、ただぼんやりと、のんびりと……。

そんな人生が良かったのになぁ。



『a twinkle of golden it』





時間が空けば空を眺める習慣は、中忍になった今でも続いている。

将棋や囲碁の最中でも、任務中でさえ、ふと気付けば空を見上げていたりする。夢中というほど好きなわけでもないが、自然と目が行く程度には空が好きだ。

あの雲の流れる感じとか。

羽ばたく鳥のシルエットとか。

段々重く厚くなっていく曇り空とか。



例えば一日まるまる時間が空いたとして、

家に居たって母ちゃんにこき使われるだけだろう。

だからといって都合よく相手をしてくれる相手が見つかるわけでもない。

もっとも俺自身も別に一人を苦に思うわけでもない。

さすがに将棋やりたくなったら相手が要るけどな。

そうじゃなかったら、自分一人、誰も来ないところで空を眺めているだけの方がいい。

人との繋がりを面倒くさいなんて言うつもりはないが、たまにはそういう事を忘れて自由に雲にでもなったつもりで過ごすのも悪くない。





そして今日もちょうど時間が空いてた。

外はポカポカ日差しが暖かくて暦の上では冬であっても、すっかり春と言ってもいいだろう。

昼寝にはちょうどいい天気だ。

暑すぎず、寒すぎず、程よい温度。

仄かに風に乗って香る花の香りがまた、よりいっそう春めいた気持ちにさせてくれる。

秘密の場所って程じゃないが、めったに人の来ない草むらに寝転がってオレはそんな昼下がりを、それこそのんびり空を眺めながら満喫していた。

小鳥の囀りなんか聞きながら、うとうとする…なんてすげぇ幸せじゃねぇ?

…なんて思っていたら、

突然、その鳥たちが激しい羽ばたきと共に飛び去って行った。

と同時に、俺のすぐ側にまで来た、よく知る気配。

「こんなトコに居たのかよ、シカマル。結構色々探したってばよ」

言いながら、そいつの足音は俺のすぐ側にまで来た。でも俺は良く分かっているがゆえに、目を開けない。

「なんか用か?」

「別に…。何か用がなきゃ会いに来ちゃ駄目なのかよ」

ちょっと拗ねたような馬鹿正直な声音に、自然と口元が緩む。

もちろん気付かせないけれど。

「いや、用も無いのに、そんなに俺の事探したんだな?」

「そ、それ…は、」

「それは?」

キラキラ、キラキラ、

薄く目を開くと、そいつの髪が太陽の光を浴びで輝いていた。眩しくて、目を閉じても消えない残像を残す。

思いの他、近くにあったその髪に触れると、頬を上気させてそいつが俺を睨んでいた。

仄かに潤んだ空色の瞳が、俺に空を忘れさせる。

雲のように自由にならなくてもいいか、と思わせられる。この輝く金色と、澄んだ空色の瞳になら、囚われてもいい。

独占できるのなら、自由なんて要らない。

それほどに俺を惹きつける存在。



雲はいいよなぁ、自由で。

風の吹くまま、流されるまま、ただぼんやりと、のんびりと……。

でも空のすぐ側にあるけど、決して空を手に入れる事はできない雲。


だったら俺は雲じゃなくていい。

自由じゃなくていい。



俺は、手に入れたいから。


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08.02.28
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