◆突発◆

□突発
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昨日から、カカシ先生は木の葉病院のベッドの上に居る。



『If I were than and there,』






別にカカシ先生が病院のベッドに寝てるのはいい。

いや、良くはないけど。写輪眼の使いすぎで動けなくなるのを何度も見てるし、別に珍しい光景でもない…と思ってしまう。

だけど、今回は違う。

いつもならただ寝てるだけだって思うけど、今回は全然違うんだ。




身体のいたる所に巻かれた痛々しい包帯。

少し赤黒く滲んだガーゼ。

嗅ぎなれない、鼻を突くような消毒液の臭い。




カカシ先生ってば、今回は怪我で入院してる。

よく生きて此処まで帰ってきたな…って言うほど酷い傷を負ってたって綱手のばーちゃんが言ってた。奇跡だって。

全身が血に染まってた…ってカカシ先生は笑って言ったけど、笑い事じゃない!

オレがそれ聞いてどんだけ心配したと思ってんだってばよ!

そう言ってオレがきつく説教しといたけど、どんだけ伝わったんだか怪しいもんだ。何だかどうも適当に聞き流されちゃった気がする…。

そりゃオレが怒ったって怖くもないだろうけどさ!



それで、それ程重体だったカカシ先生は、とりあえず致命傷ではない程度にまでは医療忍術で治して、そこから先は自然治癒に任せるという事になったらしい(…ってサクラちゃんが教えてくれた)。

だから今のカカシ先生は、死なない程度に傷だらけ。

帰ってきたときの姿は、とてもお前には見せられなかった、とカカシ先生にも綱手のばーちゃんにも言われた。

刺激が強すぎるって。

見られたものじゃ無かったって。

綱手のばーちゃんも目を覆うような状態?サクラちゃんは泣いちゃったって言ってたっけ。

そんなカカシ先生の姿なんて見たくもない。

想像したくもない。

だけど、見たかったわけじゃないけど、オレだけ知らないってのが……淋しい。

「オレも、そこに居たらよかったのに…」

気付いたらポツンと呟いていた。

カカシ先生は驚いたような顔をして、でもすぐにイジワルそうな笑顔を浮かべた。

「何、ナルトってばオレのそんな格好悪いところ見たかったの?悪趣味だなぁ」

「ちがうっ!」

人がせっかく心配してんのに!

もちろんカカシ先生だって冗談で言ってるって分かってる。オレだって怒ったけど、ムキになって言ったのはポーズだ。

「先生の格好悪いところなんていつも見てるってばよ」

呆れたように言ってやると、カカシ先生はさも傷付いたって顔で俺を見た。

「うわ、酷い。俺ってそんなに格好悪い?」

「オヤジくさいトコもあるしさ〜」

「大人っぽいって言ってくんない?」

「オッサン!」

「冷たいなぁ、ナルトは……」

カカシ先生はさめざめと泣きまねをして、手で顔を覆う。そんな仕草に、ちゃんと身体は動くんだ…ってオレはこっそりほっとした。

だって本当に体中包帯だらけなんだってばよ。

見てるだけで痛そうだし。

さっきまでは、本当にベッドのうえで微動だにしなかったって言うか。だから動けないくらい痛いのか、動けないくらい神経が傷つけられてんのか…とか色々心配してた。

「ていうか、そうじゃなくてさ……先生が帰ってきた時じゃなくて、怪我したトコ、その場所にオレも一緒にいたら……カカシ先生にそんな怪我させずにすんだんじゃないかって」

オレが言うと、カカシ先生は泣き真似をやめた。

でもまだ顔は手で覆ったままだ。

「もちろんオレが足手まといになる事の方が多いとは思うけど、でも、もしかしたら…とか、せめて何か…とかさ!」

オレで力になれるのなら、オレはその為の労力を惜しまないし。

オレの行動が、少しでもカカシ先生の為になるというのなら、何だって頑張れるんだから。

だから、もしその時その場所に居たら…って思った。

何か出来たんじゃないかって、思った。

何をしただろうって、何かは役に立てることがあったんじゃないかって思った。

もし、居たらの話だけど。

もちろんもう過ぎた事だから今更どうしようもない事だってわかってる。だけど、やっぱり思ってしまうのだ。

もしその時その場所にオレが居たら…。

カカシ先生を守る…なんて偉そうなことは言えないけど、きっとこの怪我を軽減させることは出来たと思う。

こんなに酷い目にはあわせずに済んだと思う。


きっとカカシ先生の怪我が治るまで何度だって思う。

繰り返し、繰り返し、

何度だって、



もし、その時、その場所に、オレが居たら……


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08.03.13
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