◆突発◆
□突発
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『Even if...』
ジクジクと痛む傷跡が皮肉なぐらい俺に『生』を実感させてくれる。
あの時、死ぬかとも思ったけれど、
このまま、死んでも良いとも思った。
例え自我を失っていても、
姿形が変わり果てていても、
それが大事なあの子なら、
愛しくてたまらないあの子なら、
その子の手にかかって死ぬのなら、それで良いと思った。
残されたあの子はきっとその事実に耐え切れずに壊れてしまうだろうけれど。
俺の自惚れではなく、確信として。
だって逆に俺がそんな目にあったら壊れちゃうに決まってる。
だからあの子もきっとそう。
そうなると、分かっているのに、
壊したいわけじゃないけど、
あの子は、あの場所で、あの瞬間苦しんでいて…誰かが止めてあげなきゃいけなくて。
たぶん、それはきっと、テンゾウの役目だった。
テンゾウが止めれば、何もかも上手くいった。
俺がでしゃばらなきゃ。
でも、だって悔しいじゃない。
あの子が一番苦しんでる時に、助けてやれるのが俺じゃないなんて。
俺に出来ることなんて何にもないなんて。
俺だって何か出来る。
俺だって何かしてやりたい。
そう、思ったら自然と体が動いてた。
抱きしめて、すさまじい圧力と、気が遠くなるような激痛の中で、オレはやっぱりその子が愛しくてたまらなかった。
ずっと抱きしめていたかった。
例えそれで命を落とすことになるとしても。
壊したいわけじゃない。
だけど、いっそ壊れてしまえばこの苦しみは終わるのかもしれないと思った。
もうそれでも良いじゃないかと思った。
あの子の意思なんて何も考えないで。
ただ俺自身のエゴとして。
俺が、俺のエゴで追った傷を、心配してくれるたびに涙が出そうだった。壊れてしまえば、なんて思った自分の浅はかさに嫌気がさした。
壊していいものじゃない。
大事に、大切に、守るべきものだったのに。
嫉妬とエゴでそれを壊そうとしたなんて、なんて酷い男。謝ったって許してもらえないくらいに酷いことしてたよね。
ごめんね、ごめん…
こんな男でごめんね。
謝ったって仕方ないし、あの子を壊さない為には謝ることも出来ないけれど。
謝れたら、忘れないのかな。
俺はまたいつか間違いを犯すかもしれない。
お前が好き過ぎて。
気持ちが溢れて。
それが嫉妬か束縛かどんな形を取るかは分からないけれど。
お前を大事にしたい気持ちを押しつぶすほどに、それらが大きくなるときがあるかも知れない。
そんな時は来なければいいと思う。
来てほしくないと思う。
だけど、
それでも、
もしかしたら……
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08.03.13