薔薇乙女小説の時間

□一緒に寝てもいい…?
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その日も唯穏やかに日は沈み、何時もと変わらない夜を過ごす。
食器を片付けるのりとそれをせっせと手伝う翠星石。
雛苺はソファーに座るジュンに遊んでもらいながら(よじ登りながら)テレビを見ている。
それを不服そう睨みながらも、テーブルに座ったまま本を読んでいるのは真紅である。
やがて時を知らせる居間の鳩が九回鳴く頃には人形達もジュンの部屋に戻り、
新しい朝を迎える為にやがて眠りに就く。そんな変わらない日常。
ただそんな日常も、これから少し逸れる事となる。
「...お前、まだ寝ないのか?」
パソコンのディスプレイから視線を外し、回転軸のあるイスごと身を捻る。
そこには閉じた三つの鞄と、くんくんのぬいぐるみを抱きしめたまま読書にふける真紅の姿、
そのまま目線を上げていけば、とうの昔に九時を過ぎ、
午後二桁目の時間に差し掛かろうとする壁掛け時計がある。
人形達の中でも特別数字にうるさいのが真紅だ。
紅茶の温度が2度違うだの、用意するのが28秒遅いだの、
ストップウォッチか温度計でも内蔵してるのではないかと本気で疑える。そして彼女が最も尊重する最優先事項は睡眠時間である。
例え何が起きても(部屋のガラスが割れても)九時に就寝することより大事な事は無いと言う程で、
そのおかげでジュンは今までに2回程被害に遭っていた。
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