薔薇乙女小説の時間

□君のいない日
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「お願いかしらー!」
そう金糸雀が週末の桜田家を訪れたのは昼のこと。
その日の昼はよく晴れていて、開いた庭の窓から入る風も涼しく、とてもいい天気だった。
ジュンとノリ、そして真紅と翠星石は食後のお茶を飲みながら、ゆったりとした時間を楽しんでいた。
何度言っても玄関からやってこない、困った訪問者にももう慣れたのか、
椅子から腰をあげることなく、四人は開かれた庭の窓の先へと視線を送る。
「またアンタですか、金糸雀……今日はなんの用なんですぅ?」
また面倒ごとが起こるのだろうと予想している翠星石の表情は、早くも迷惑そうな色を浮かべている。
こほん、と小さく咳払いする金糸雀。
そして右腕を高々と上げた後、真紅に視線を向けてびしっと指を差す。
「今日は真紅にお願いがあってきたのかしらー!」
差し向けられた金糸雀の右指に、真紅は口まで運んでいたティーカップをソーサーの上に置く。
そして今日は私なのね、といわんばかりに溜息を零したのだった。
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