薔薇乙女小説の時間

□雪
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あの冬の雪の日アリスゲームは終わりを告げ真紅達は僕の前から姿を消した。
あれから数十年…僕は…
ーボーン・ボーンー
不意に柱時計が錆び付いた音を立てなり響いた。錆びついているこの時計はまるで僕自身のようだ。

真紅達だけじゃない。両親も姉ちゃんもある日突然に愛は何気なく終りを迎える。
不意に両親が海外に旅立った幼い頃を思い出す。今と一緒であの頃も優しさに飢えてた。
僕の心はあの頃と何も変わらず今も嫉妬だけがつのるばかりだ。
彼女が言っていた。
ー生きることは戦うことー
でも僕は傷付くのが怖くて何もできなくなる。
あまりにも貴方の声は遠すぎた…
それでもいつか夢が叶うと僕は願っていた
でも現実は…
僕の夢は崩れて砂になり風に流されてしまった。
あれから僕は二度と人を愛せずに生きてきた。
ただ君だけをさがしていた。
そして今も君だけをさがしている…


「しょうがない下僕ね」
突然声が響いた。
「し、真紅なのか?…」
「当たり前でしょ。主人の顔も忘れたの?本当に困った子ね」
昔と少しも変わらず、凛とした声で彼女は答えた。
「そんな…突然どうして…なんで今頃になって僕の前に現れたんだ…お前達が突然いなくなってから僕は…」
「ジュン」
「な、なんだよ」
そっと彼女の手が僕の頬に触れた。その手は人形なのにとても暖かく、僕の心に積もった雪でさえ簡単に溶かしてしまった。
「また一緒にいきましょう」
「一緒にいてくれるのか?」
「ええ。私は幸せなあなたのお人形…ずっとあなたと共にいるわ」

ふと窓を見ると、まるで数十年前のあの日ように雪が舞っていた…

「さあ、いきましょう」
彼女が微笑んで手を差し出した。
僕はそっとその手を握り…
そして…
あの冬の日と同じ、季節が雪を降らしたそんな夜だった。

end
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