薔薇乙女小説の時間

□一緒に寝てもいい…?
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兎も角、最も時間にうるさいはずの真紅は、今日に限って依然眠りに就こうとしないのだ。
「どうしたんだよ。いつもなら二分過ぎただけでも大事だとか言ってるのに」
声を掛けても全く反応を示さない。眠っている訳ではないようだ。
「おい、真紅。一体どうしたんだよ。」
やはり沈黙。
何かがおかしい。いつもの彼女なら本を読んでいる間でも話しかければちゃんと応じてくれた。
読書の間にも周りの変化には気を配っていて、集中していても話しかける相手を無視するなんて事はなかった、と思う。
「はぁ...。何なんだよ、ったく」
人が珍しく心配してやっているというのに。
視線をディスプレイに戻すも、ネットサーフィンも興が冷めてしまった。
どうしたものかと考えていたら、喉の渇きを感じたので自室を後にし、居間へ降りる事にした。
「......。」
ガラスのコップに水を汲み、喉を鳴らしながらそれを飲み干す。
軽く濯いで乾燥棚にコップを置いて、自室に戻ろうと振り向けばすぐ後ろには真紅がくんくんを脇に挟み、立ったまま本を読んでいた。
「お前も何か飲むか?インスタントで良いなら紅茶も入れられるけど。」
顔を本に隠したまま、ふるふると首を横に振る。はて、こんな光景を以前にも何処かで見たような...。
「あ、そう。」
いらないというのなら別に気を遣ってやる必要もない。廊下へと繋がる扉に手を掛け、誰もいなくなったリビングの電気を消した。
「きゃっ」
「はぁ?」
なんだ今の奇声は。慌てて電気を付けて辺りを見回す。が、さしあたっておかしな所はない。
「真紅、今何か...」
...真紅。もうしかして今の真紅の...?
一瞬よぎった考えは一瞬のうちに捨て去られた。まさかあの真紅があんな声を上げるなんてありえない。
ジュンの今までの経験がそう語る。しこりが取れない気分ではあったが、付けた電気を再び消してジュンは真紅と共にリビングを後にした。
やはり何かがおかしい。
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