薔薇乙女小説の時間

□いつもどうり
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「おい。どうかしたのか性悪人…痛!」
突然翠星石は僕の足を蹴ってそのままドカドカと足音を立てながら部屋から出ていった。
「す、翠星石!ごめんね。ジュンくん」
「いいよ。もうなれたよ。ハァ」
実際、最近では翠星石との喧嘩が日課にさえなってきている。
「でもねジュンくん。翠星石は家ではジュンくんの話ばかりしているんだよ」
「僕の?」
「うん。今日はジュンくんと何を話しただとか、一緒におやつを食べたとか、色々話てくれるよ」
「あいつが僕のことを…」
ふと、窓から入ってきた風が僕の頬をなでた。
いつもどうり割れた窓ガラス
いつもどうり入ってくる風
でもこの部屋に引きこもっている僕はこの窓ガラスが割れなければこの風に気付くことはなかった。
あいつがいなければ…
「ジュン…」
ふと見ればこの部屋から出ていったはずの翠星石がドアから顔を出してこちらを見ていた。
「ほら翠星石そんな所にいないでジュンくんに話があるんだろ?」
「蒼星石…」
「僕は先に帰っているよ。ジュンくんお邪魔しました」
そう言って蒼星石は鞄に乗って窓から帰ってしまった。
「ジュン…」
「な、なんだよ?」
「あの…その…ジュンは翠星石の事嫌いですか?」
「なんだよ…それ。」
「ジュンは翠星石の事が嫌いなんですか!?」
さっきより、若干声が大きくなっている。翠星石は目が潤み、肩をフルフルと震わせ、必死に泣くのを我慢しているのが分かる。その様子に気づき僕は慌てた。
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