雷鳴は轟き炎は紅蓮の花を咲かす
□第零章 蒼い三日月
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『今日は美しい三日月ね』
夜の空を見上げれば、そこにはただ儚く輝く蒼い三日月がただポツンと浮かんでいる。
「また月を見ていたのか」
その声に振り返れば、この世で一番大好きな人がいる。
その事実に彼女は目を細め、微笑みを浮かべた。
『いけないかしら?』
「いや、そういう訳ではないのだが…」
相変わらずの態度に、彼女はクスクスと笑った。
『三日月は、あの人を思い出させるわ』
「死んだように言うな」
『ふふ、ごめんなさい。
こんな事言ったら、あの人にも怒られちゃうわね』
彼女は微笑みを浮かべながら言った。
最近は会っていない。
彼も忙しいし、あの人も忙しいのだから。
そう思いながら三日月を見上げていると、彼は何も言わず、彼女の横に腰を下ろした。
彼女は彼を見て笑みを深くすると、そっと彼の肩に寄り添った。
『雷鳴は轟き炎は紅蓮の花を咲かす』
彼女の言葉に、彼は少し微笑むと、彼女のその柔らかな髪を撫でた。
その言葉は、彼とあの人を連想させる。
寄り添う二人を静かに見守る月は、
あの人のように、
どこか優しさがあった。
BASARA