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□始まりはまぼろし 後
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自分は此処で何をしているのだろうか。

文句を言っておきながら、結局甘寧の邸へと赴いてしまった。嫌ならば来なければ良いのに、断らないまま無視しておくのはいけない気がして今に至る。

(俺もつくづく、お人好しだねぇ)

主である男が出て来ると、凌統は彼の部屋へ通された。後から酒と杯を手にした、此処の使用人も付いて来る。

「ふうん……結構片付いてるじゃないか」
「何だよそれ。まるで俺の部屋は汚えとでも思ってたような言い方だな」
「そりゃあね。あんた大雑把だからさ」

片付いているというよりは、あまり物が置いていなくて殺風景というべきか。どちらにしろ、ゴテゴテと飾り立てない主義なのは分かった。



それこそ、上辺では凌統は甘寧と普通に会話をしているが、夢のことが引っかかって、気が気ではなかった。その確率は低いが、いつボロが出るか心配なのである。

あんな夢を見たことが知れたら……彼は軽蔑するだろうか。

普通の戦友として、接することは出来なくなるのか。

(て、何でこんなこと心配してんだっつうの)

別に嫌われたくないとか、そういう訳でもないんだから。仇なのだから尚更。

そう己に言い聞かせる。

「お前よぉ、俺のこと避けてねえか?」

前置きもなく、図星をさされた。心臓が跳ねる。

「……別に、避けてないけど」
「そうか?」
「例えそうだとしても、仇なんだから別におかしくないだろ」

馴れ馴れしくてたまるか。見たら、甘寧が顔を歪ませていた。

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