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□クリスマス甘凌
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毎年その日が来ると、朝起きてから夜寝るまでわくわくして仕方がないものだった。
今年は何をくれるんだろう、とか今年は絶対サンタの正体を暴いてやる、とか。深夜まで起きていると結局睡魔に勝てなくて、途中で眠ってしまうのだが。


そのイブの日、修道士の先生からプレゼントは良い子しか貰えないと聞いて俺は、甘寧は絶対貰えないな、と真っ先に思った。だって一日中いたずらばかりしているから。勉強もせずに外に遊びにいったり、それで服を汚して帰ってきたり、夕食前におかずを摘み食いしたり、他の子たちの持ち物を隠したり。悪いことばかりして、先生やシスターを困らせてばかりいる。

「ははは、それはそうかもしれませんねえ」
「でしょ?」
「何だよそれー!」

俺がそう先生に話すと、甘寧は怒った。単純だ。

「だって、その通りでしょ」
「それ言うならお前もだぜ。門限破って遊びに行くとき凌統もついて……もが」
「それは言っちゃ駄目だっつうの!」

慌てて甘寧の口を手の平で塞ぐ。こっそり上目で先生を見ると、とても恐い顔をしていた。

「あの……先生」

甘寧のせいで俺も一緒に甘寧と規則を破っていたことがバレてしまった。サンタさんからプレゼントを……貰えないかも、しれない。

「甘寧は知っていましたが凌統、あなたもでしたか」
「ご、ごめんなさい……」
「もうしてはなりませんよ」

次にはもう先生はいつもの優しい顔に戻っていた。俺も自然と笑顔になる。

「大丈夫、ちゃんとプレゼント貰えますよ」
「良かった……」
「お前サンタクロース信じてんの!?」

俺が先生の言葉を聞いて安心していると、甘寧は俺の手を無理やり外して可笑しそうな顔をした。馬鹿にしたような笑みが鼻につく。

「甘寧は信じてないの?」
「当たり前だろ。人の家に勝手に入って子供が寝てる間にプレゼント置いてくじいさんなんて、信じられないよ」
「サンタさんはいるよ、絶対」

甘寧はサンタさんはいないと言う。でもそんなはずはない。サンタさんは良い子にご褒美をくれに、今日の夜やってくるんだ。

「証拠はあるのかよ」
「去年ちゃんと貰ったもん! 甘寧は貰ったことないの?」
「ないよ、一度もな。俺今年来たばっかだし」

そして甘寧は少し寂しそうな顔をした。俺は朝起きると枕元に何もなかった、なんてことがなかったから、よく分かんないけど。

今年来たばっかだし、というのはクリスマスとどう関係するのかは知らないけど、甘寧は今年の春にこの孤児院にやってきた。俺みたいに親が亡くなった訳ではないらしい。親が突然居なくなったって、先生たちが話しているところ聞いた。どういう事情なのかよく知らない。

“捨てられた、ってことなの?”
本人にちゃんとききたいけど、そんなことをきく程思いやりがない訳じゃない。甘寧の気持ちを考えるとそれはきけなかった。

「とにかく、サンタさんは絶対にいるよ!」
「はいはい、そこまでですよ。他にやることがあるんじゃないですか?」

俺と甘寧の言い争いを止めたのは先生だった。油を売ってないで勉強しなさい、ということだ。

「じゃないと本当にプレゼント貰えなくなりますよ」

先生の笑い声を背中に聞きながら俺たちは走り出した。勉強して良い子にしてないと。


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