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□本当のところ
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瞬間、城中には叫び声が響き渡った。何故ならば、暗闇の空間の中に白くぼう、と光る朧な人影が見えたからだ。





「だからって、何で、自分の家に、行かないの、かねえっ」

肩で呼吸をする。悲しいことに俺は自分の邸ではなく甘寧の邸に着いていた。あの後全力で逃げて、城から一生懸命馬を走らせたのだ。無意識に此処に向かっていたらしい。

「旦那様でしたら、ご自分のお部屋にいらっしゃいますよ」

甘寧の邸に仕えている女官にそう言われ、奴の自室へ向かう。時間的にまだ寝ていないだろう。
まさか本当に幽霊が出るとは……。しかもそれが俺の部屋だなんて、迷惑すぎる。

「おい甘寧! あんたが言ったことはどうやら本当らしいぜ」

扉を開けてずかずかと部屋へ踏み入れる。いきなりの俺の登場に驚いたのか、甘寧は呆気にとられた顔をしている。

「だから言っただろうが! 幽霊が出るって」
「だ、だって普通は誰でも最初疑うでしょうが。真に受けるかっつうの」
「ま、いいか。これで俺の疑いは晴れた訳だしな。……ところでよ」
「ん?」
「何で俺んとこ来たんだ? 自分家行けば良かったんじゃねえ?」

「それは……」

甘寧はこっちを見てニヤニヤしている。あー苛つく。こいつ分かって言ってやがる。

「怖くて俺んとこ来たのか?」
「ち、違うってのっ」

顔が熱くなるのが分かった。こうも慌てると肯定しているようじゃないか。

「何が違わねえんだよ。ぁあ?」
「あんた最初と性格違う……」

(もとからだが)何て極悪面だ。知らぬ間に壁際に追い詰められていた。

「おい……」
「あ?」
「何処触ってんだよ……つかどうしたらこんな展開になるのさ」
「お前が本当のこと言わねえからだろ?」

顔の両側には甘寧の腕。身体は甘寧と壁の間に挟まれて逃げられない。

「ちょ、顔近い、っつうの」

鼻と鼻が触れ合える距離だ。多分俺の顔は紅くなっているんだろう。

「このまま襲っていいのか?」

つうかあんたは最初っから襲う気満々でしょうが。そして白状してもどうせ襲うつもりなんでしょうが。だったら「怖かったから此処に来た」なんて言ってやんないよ。

唇が重なる瞬間、俺は薄く笑ってみせた。






…………ってか、俺の部屋に出現する幽霊はどうするんだろう。






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