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□始まりはまぼろし 前
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凌統は朝から機嫌が悪かった。機嫌が悪いというよりは、気分が悪いのかもしれない。

兎に角、寝起きから今の午前中まで最悪だったのだ。

(なーんであんな夢見たんだか……)

溜め息を吐く。幸せが逃げていったような気がした。

見た夢のせいで、執務が一向にはかどらない。筆を持ち直してみても、やる気は起きなかった。

「凌将軍、如何なさいました?」

何度も溜め息を吐いたり、執務が進まない上司を心配したらしい副将が、尋ねてきた。

「いや……何でもないよ」

しかし悟られる訳にはいかない。凌統は苦笑して誤魔化すだけだった。


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