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□始まりはまぼろし 後
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「お前、ちっとばかし不自然だぜ。何か隠してんだろ」
「別に……?」
言えない。たいしたことではないが、言えない。
すると何を思ったか甘寧は恐ろしいことを口にした。
「俺のこと好きだろ」
心臓が跳ねるどころの話ではない。危うく、機能が停止するところだった。
少し寿命が縮まる思いだ。
「は……? 何言ってんだよ。頭おかしいんじゃ」
突然、目の前が陰った。
甘寧に接吻されていると気付くのに、数秒掛かった。
あまりにも驚愕の出来事だ。
「……からかってんのかい」
そう思うのに心臓の音は激しく脈打ち、静まることを知らない。
「からかってねえ。つうかよぉ、認めちまえよ。俺が好きだって」
先程の接吻から、朋友としてではないだろう。だとしたら恋愛面での好き? ……まさか。
「部屋で陸遜と話してんの聞いちまったんだよ。好きでもなんでもなかったら、あんなん見ねえだろうが」
「…………」
最悪。
甘寧にあの夢の内容を聞かれていたなんて。
凌統は今になって恥ずかしさが込み上げてきた。顔が紅潮するのが分かる。
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