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□Trick or Treat!?
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「すまん、今はやれるものはこれしか置いてなくてな。我慢してくれ」

肉まんだ。決してお菓子ではない。
さっきから甘寧に色々言っている割には、正直甘いものを期待していたので、すこし残念だ。

「すみません呂蒙殿! 俺たち図々しくて……別にくれなくても結構で」
「でも何かやらんと悪戯されるのだろう?」
「おっ、肉まんか。俺にとっちゃあ、菓子よりもこっちがいいな」

結局、呂蒙殿から肉まんを貰ってしまった。持ち帰りに困るだろうからと、ちゃんと袋に入れてくれた。優しい人だ。甘寧と違って気がきく。

次に向かったのは、陸遜殿の邸。こんな夜分に彼の家に行くのだけは止めた方がいいと思うが。
そんなことは考えてもいないのか、隣の男は邸の扉を先程の時と同じようにドンドン叩く。叩くというより、殴ると言った方が適切かもしれない。

「陸遜、出てこねえなあ」

多分、陸遜殿は敢えて出てこないんだと思う。俺たちが来るとロクなことがないと考えているのだろう。正しい判断だ。さすが。
それでも甘寧は諦めずに扉を叩く。中には灯りが点いているのだ。でも主は一向に出てこない。

「なあ、もう止めたら? どうせでてこないだろ」
「そんなことねえ……おーい陸遜! 居るんだろ!? 出てこいや」

いきなり叫び出した。隣にいたもんだから耳が痛いったら……。
何をしているんだこの男は!

「お前なら今日は何の日か知ってんだろ!? 早く出てこねえと近所迷惑だぜっ」

何故一生懸命にハロウィンをやるんだこいつは。こんなに楽しそうな顔をして……。
暫くすると、中から陸遜殿が恐ろしい顔をして出てきた。すごい迫力だ。
そして満面の笑みと共に一言。

「貴方たち、此処が誰の邸かを知っての行為でしょうね?」

ヤバい。俺もう帰りたい。
俺はこういう状態だというのに、甘寧は恐れる風もなく言葉を発する。

「トリックオアトリート……ぶ」

陸遜が甘寧の顔に菓子を投げつける。俺たちの目的はもう知っているらしい。

「今日は欧米のハロウィンですよね菓子をやりますからさっさとお帰りなさい迷惑です」

一息でとんでもない毒を吐いた。それはそうだ、出仕で疲れているところ夜分に押しかけられたのだから。それで何も言わないのは呂蒙殿くらいだ。

「す、すみません陸遜殿。こんな夜分に」
「ああ、弁解は結構です。凌統殿、どうせ甘寧殿の押しに負けたのでしょう?」
「うっ……」

図星で、何も言い返せなくなる俺。陸遜殿の裏のある笑みが怖い。

「甘寧殿。こんな遅くに訪ねて迷惑だと思わないのですか?」
「だって今日はハロウィンだぜ?」
「いくらハロウィンと言っても、こんな時間に出歩いて人の家に押しかけるのは貴方くらいですよ。というより、私は甘寧殿がハロウィンを知っていることに驚きですね」

甘寧……酷い言われようだな。少し同情したくなる。
少しの間問答を繰り返した後、結局俺たちは陸遜殿に追い出され、次の標的へ向かうことになった。
無礼は承知で孫権様、姫さん、二喬のお二人、周瑜殿、周泰殿……。どの邸からもいくつか菓子の収穫があり、俺たちの両手はいっぱいだった。
そして、やっと邸に着く。


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