捧げ物

□たまには
2ページ/7ページ

「大丈夫よ、新型じゃないって言われたから」

障子の向こうから母さんの笑い声がした。

カラリと開けると、布団の上に起き上がってクスクス笑う母さんと、心配そうにその傍らに座る父さんが見えた。

「もー、父さん!人が話してる最中にいなくならないでよねー!」

文句を言いながら父さんの隣に座る。


「悪い悪い。ついな」

「アハハ。大丈夫よー!」
「熱測ったか?」

「さっき測ったら38度7ぶ…こほっこほっ」

「ああもう寝てろ!」
父さんがあわてて母さんを布団に押し込む。

「ちょっとー!大丈夫だって言っ…ごほっ」

「全然大丈夫じゃねーじゃねーか!…明日仕事休むかな…」

「駄目よー。アンタ一応できる奴なんだから暗号解読部のひとたち困るわよ」

「でもなぁ」

「大丈夫よ父さん。私明日から連休だから母さん看るよ。家事もするし」

「………わかった。イノリ、母さんを頼んだ」
「まっかせといてよ!」

「なるべく早く帰ってくるからな」
「待ってるわー。ゴホッケホッ」
「もう寝ろ。・・・やっぱ休もうか・・・」
「父さん!ダ・メ!!」
「わかったよ・・・。イノリ、晩御飯食ったか?」
「うん。父さんのも作ってあるよー」
「お前料理できたのか?」
「へへー!」

「じゃ悪いけどこっちに持ってきてくれ。ここで食う」
「はいはいりょーかいっ」

パッと立ち上がって台所へ走る。


「はいどーぞ」ってカップヌードルを差し出したら
「これは料理っつーのか?」って突っ込まれた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ