MAIN(テイルズ)
□そらへのちかいのことば
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今思えば、彼はそれだけ辛く哀しい思いをしてきただろう。
生きていること存在することさえ赦されない哀しみ。
自分自身の存在への絶望。
創られた命は生きることを赦(ゆる)されず、何かを残すことも赦されない。
与えられたものは全て被験者(オリジナル)のもので、“彼自身”に与えられたものなんて数えるほどしかなくて。
そして与えられたものはいずれ、被験者に返さなければならない。
―――彼自身には何も残らない。
自分は今まで、彼に“全て奪われた”と思っていた。……けど、違った。
彼は自分に、与えられたもの全てを“返した”、つまり奪っていったのは彼ではなく自分自身。
全て、自分の元に戻ってきた。
それだけでない。
自分は彼から奪っただけでなく与えられていた。
自分は彼の命を“奪い”、彼は自分に命を“与えた”。
預言(スコア)に記されていた自分の死は彼の死に書き換えられ、死んだ自分は生きた彼に命を与えられ存在を赦された。
自分は存在を赦され、彼は存在を赦されなかった。
そして、彼のものの大半が自分のものになった。
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