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□優しさなんて知らないけど君とのキスは
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「―――…いってぇ……」
ぽたりぽたりと自分の頬を伝う血を拭いながら部屋へと戻る。
いつものことだが、やっぱり痛いものは痛い。
我等がヴァリアーボス、XANXUSは優しさの欠片も持ち合わせない野郎だ。
一に暴力、二に暴言、三四五で……はぁ。
それが許されんのは力があるからなんだけどよぉ。
特に俺、S・スクアーロは格好の標的となっている。
大半の暴力は俺に向けられてるはずだぁ。
「…あいつ、毎日毎日何が不満なんだぁ…?」
そもそも俺とXANXUSの関係は曖昧だ。
恋人同士、でもあれば、主と下僕、でもある。
…恋人同士って表現は正確には合わないけどなぁ。
体だけの関係かと問われればそうでもない。
「あら、スクアーロ。大丈夫?」
「ルッス……悪い、救急箱取ってくれねぇかぁ?」
「お安いご用よ」
関係が曖昧だから、あまりわかってやれない。
心で何を思おうと、何も伝わらない。
殴られる、の事実がそこにはあるだけだ。
「…―――で?今日の殴られ内容は?」
「あー…単純にスペルミスだぁ」
「珍しいわね、そんなことでなんて」
「……多分虫の居所が悪いだけだろぉ」
もういい、とルッスの声が届いて有り難うの意をこめて笑えば怪訝そうな顔されて。
思わず怒鳴れば、笑いながら冗談だ、と返ってきた。
そんな雰囲気を綺麗にぶち壊してくれたのは、やはりと言うべきかXANXUSだった。