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□優しさなんて知らないけど君とのキスは
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 半壊した馬鹿でかい扉。

 そこに立っていたのは不機嫌の文字を背負ったXANXUS。





「あら、ボス…?どうか、したのぉ?」


「ゔお゙ぉいっ?!てめぇ何どさくさに紛れて俺の後ろに隠れてんだぁ?!」


「私は怪我したくないのよっ!!」


「んなもん俺の知っ…―――」


「ドカス、来い」


「っ?! お、おぅ…?」





 それだけを言い放つとさっさと踵を返して行ってしまうから。

 慌ててその背を追う。





「な、何だぁ?さっきの報告書に不備がまだあったかぁ…?」


「るせぇ」


「……。」





 何を言っても結果はいい方向に向かうことはないだろうから黙ってその後ろに付いて歩く。

 向かった先は執務室ではなく、XANXUSの私室。





「……ゔお゙ぉい?」


「さっさと入れ」





 鋭い瞳に睨まれて、仕方なく足を踏み入れる。

 この部屋を使う時ってろくなこと起きねぇんだよなぁ…



 カチャンッと鍵の閉まる音がした次の瞬間、背中に鈍い痛みが走った。





「…っ何、しやがる…っ!」





 目の前にはXANXUS。

 背中には鍵のかかった扉。

 早業で両手首を頭上で押さえつけられて、脚の間には目の前の男の脚が割り込んでいる。





「XANXUSっ?!」


「黙れ」


「んな今にも襲われそうな状況で、はいそうですかって黙っている男がいるかぁ…!!」


「スクアーロ」


「……っ!」





 低く、甘く。

 XANXUSの声が暗い部屋に響く。

 優しさの欠片も持ち合わせない野郎なのに。





優しさなんて知らないけど君とのキスは


滅茶苦茶優しく感じたのは、名前を呼んでくれる声に少しの優しさを感じたから。



END.
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