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□捨てられるくらいなら、
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「心中するか別れてくれって言ったらどうしますー?」
思ってもいないことを聞いてみた。
例えばこれがあんたの弟辺りなら笑い転げて床の上を這い回り柱に頭でも打って腹いせにミーにナイフの十本も投げるくらいの質問だ。
どうにもあまり信頼されてはいないんだけど、ミーはこれでも本気であんたに惚れてあんたの持つマーレリングが偽物だったりあんたが偽の六弔花だったりした事実には結構運がいいと思ってる。
そりゃああんたは随分項垂れてしばらくは白蘭とやらの迎えを待っていたけれど、案の定奴は現れなかったし、ミーが毎日毎日口説き続けてやっと落としたあとにはもうあの男の名を呼ばなくなった。
そういう状況を踏まえた上でさっきの質問自体は特におかしくはないはずだと思う。
「し、ん、じゅう?」
ちょっとなにその舌足らず。
厚い前髪の下できょとりと丸くした目が可愛いとか言ってやらない。
「そうそう。例えばうちのボスとかーあんたのボスとかに無理矢理引き離されることになったら。ミーと死んでみたいですかー」
「全っ然」
「うわ…ちょっとは迷えよ堕王子兄―」
別にショックじゃないけどなんかショックじゃん。て、結局ショックじゃん。
「迷うかよ。んなことになったら俺がてめーを攫って逃げるぜ」
「は…、はー?」
なに言い出すのこの人。なんか真顔だし。
「今更離れられると思うなよ。逃がさねーよ?…言っとくけど俺執念深いから」
「え…いや…あ。もしかしてあんたミーのこと超好きなんだー?」
「…ちげーし」
いやいやいや。どう考えても惚れてるでしょ。メロメロでしょーよ。
うわーお。言ってみるもんですねー。
いいこと聞いた。超らっき。
「んー、ん。…うん。ミーもその時はあんた連れて逃げることにする。あんた見てると飽きないもんなー」
「なにがだよ」
「いやあ。色々」
その顔とかね。
捨てられるくらいなら、
(あ。それと俺を捨てたら殺すから)
(えええ?)