主に
□現色の世界の中で
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「貴様はいつもそれをかけているな」
そう言ってヤツは俺のサングラスを手にとった。
「なに、気になるの?」
そう聞けば
「これをかけて何か違うものでも見えるのか?大して変わる物など無いだろう」
質問で返される始末。
「まぁ視界に入るものがセピアっぽくなったりするだけだがな…。まぁ、見たくないものは見ないで済むから、かね?」
きっと彩られた世界を見れば愛着が湧いてしまう。そうなれば仕事がしにくくなるのは明白だ。そんなこと、自分が一番良く知っている。身に染みている。だったら愛着なんてわかなければいい。彩られた世界から目を背ければいい。背けることが出来ないなら、愛着が湧かない色に染めあげればいい。だから−
「下らんな」
彼の一言で俺の思考は断ち切られた。
「貴様がそれにどんな思いを込めているかは知らんが…今は必要ないだろう?今貴様の目の前にいるのは私だけだ。……それとも、セピアに染まった私を見るつもりか?」
ふざけた様に言っても君には解ってしまうのか。嗚呼、俺は何処まで見透かされているんだろう。
「まさか」
少しの動揺と愛情を胸にしまい、微笑んでみせる。
「そんな勿体無いこと出来るわけないだろう?俺は貧乏性なんだ」
「ふん、どうだか…」
終