主に
□かなしい
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急に世界が反転した。
さっき目に入っていたのは障子。
でも今は天井と、それと−
背中に感じるのは床の冷たさ。顔の横には彼の両手がつかれていて。
「…何スか」
一体この状況は
「あれ?驚かへんのん??押し倒されとるのに」
ああそうか、押し倒されているのならこの背に感じるものも、視界がほぼあなたで占められているのも合点が行く。
「今さら驚くことじゃないでしょうよ」
いくら隊内に女性がいてもそれはごく僅かであり、圧倒的に男のほうが多い。となるとあぶれる者が出てくるのは当然。そんな奴らは自分で慰めるか同性と目合うしかない。そういう経験がある者は少なくない。
…身分も階級も関係無く隊員と接する彼ならなおさらだ。
「あの人にも抱かれたん?」
何故俺を抱く人はいつもそんな事を聞くのだろう。
自分がその相手より快感を与えられると?
その比較を何故俺にさせるのだろう。そんな事を知る為に抱かれる俺はなんだ。いや、俺に存在する価値なんてないんだろう。いくら没落したと言っても貴族としての品性も何もない。そう貶まれてきた事には慣れたけど。
「藍染隊長になら、抱かれましたよ。てか、なんでそんなこと聞くんスか?」
「だって悔しいやないの。欲しいモンを先に捕られるなんて」
「…性欲処理相手、としてですか?」
絶対乗せられない、期待しない。そんなことして傷つくのは何度も経験した。
最初に自分を痛みに馴らしておけば、来た痛みに傷つかない。だから。
「…ホンマにそれだけか試してみる?それだけやあらへんこと、証明したるさかいに」
そして彼は一層微笑んだ。
あなたに抱かれれば、その能面の様な顔の背後にある本当のアナタが見えるのだろうか。
「…お気の召すままに」
終