主に

□あの頃は、まだ
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「一体どういう事だ!!」

抑えきれない思いを叫びながら、胸ぐらを掴んでいた相手を壁に突き飛ばした。

「…っ。どうもこうもありませんよ、聞いた通りですが?」

胸元を整えいながら、力を見せつければどうとでもなるのか、と皮肉を洩らした。

「俺が聞きたいのは何故急に今回の作戦が全て貴様に一任されたかだ。これは先にこちらに来た案件だぞ?!」
「それは知っていますよ。…そんなに僕の作戦に従うのが嫌ですか?」
「それとこれとはっ…!!」

コイツの能力は認めてはいる。上層部にその能力を買われ、民間人でありながら作戦に携わる事は少なくない。そして奴が立てた作戦自体、失敗することは無い…。
しかし、これではまるでこちらがふがいないようで。

「そちらの作戦自体に不備があるとは思えません。僕に依頼が来たのは、ただそれが『今回の侵略には不適格だ』、という上層部の判断でしょう」

ですからそんなに怒らないで下さいよ、と微笑まれたがそんな事で片付く問題ではない。

「俺が言いたいのは…!」
「ならば僕ではどうなのか、と。」
「…あぁ、そうだ」
「今回の侵略地は新エネルギーを開発したとかしないとかいう、辺境の小さな惑星でしたね。ですからその新エネルギーの確認とそして確認終了次第それの奪取、もしくは中枢の掌握…が任務ですよね」
「何度もシミュレーションはしたし、作戦も万全だ。万が一に備えて出撃準備も整え…」
「それでは困るから、僕なんですよ」

たとえ小惑星であっても、新たなエネルギーを持っているというならば、危害を全く加えずにその一切を手中に収めなければならない。ならば、そこに武力での介入も、武力を持った者が関わる事も罷り成らない。

「僕ならその条件を満たし、相手側に全く資源を使わせずに侵略することが出来るんですよ。」
「しかしな…!」
「そんなに争いたいんですか?」
「…っ!!?」
「侵略という行為はその国の、あるいは星の全てを侵害し跪かせます。それでもまだ飽きたりませんか」

違う、それは

「僕は出来るだけ血は流したくないんですよ…命より大切なものを穢す事になっても」

視線がかち合った瞬間にふと引き寄せられた。何か、深い哀しみを経験したようなそんな目を、何故してるんだろう

「…ミーティングは明日、14:00(ヒトヨンマルマル)から行います。それでは」

コツコツと離れていく足音を呆然としながら聞いていた。向けられた背中を追うなんて、あの時の自分にはまだ出来なかった。













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