主に
□相背
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降ってくる雪を避けるように
寒さから逃れるために
小さく身を縮めて
身を寄せあうんだ
『相背』
出会ったのは冬。
それからしばらくもたっていないから寒さはあの時と変わらない。むしろ寒くなったくらいだ。
誰にも見られてはいけない。バレることなんて論外。そんな関係に俺たちはなっていた。
「…寒ぃ」
「あぁ、そうだな」
さっきからこの繰り返し。特に何も話さずにただ、一緒に肩を並べ、寒さから身を守るだけ。
何を話せというのだろう。俺たちは敵同士で、今の状況でさえあってはならないことなのに。
俺はカイを、殺してしまうかもしれないから。
でもそれはアイツだって同じことで、良太郎を殺してしまうかもしれない。
俺はそんなの嫌だ。だから、きっとアイツも嫌だと思うんだ。でもカイがいなくなったらアイツはまた、無感情な目でモノを見てしまいそうな気がして。それも嫌なんだ。
良太郎は「主人」なんてヤツじゃないけど、一緒に居たいヤツで。アイツらが仲間にしたことを許せはしないと思うけど。
それでも
それでも一緒に居たいだなんて
「……俺ってワガママ?」
「…なんだ、いまさら」
「お前とも、アイツらとも一緒に居たいって思うんだ。ワガママかな、俺」
「ぁあ、ワガママだ」
矛盾した願いは叶わない。叶うとしてもどちらか一方のみ。故に両方を願っては叶えられない。
それなのに俺もその両方を願っている。叶わないと知りながら、お前の願いを叶えさせてやりたいと。
愛しいのに触れられないのか
愛しいから触れることが出来ないのか
俺はこの手をお前にさしのべることすら出来ない
それでも、この想いに偽りはないから
「だが、お前の気持ちは解らんでもない」
「ぇ…?」
『 』
「……呼んでる」
「そうか」
「行くな?」
「あぁ」
立ち上がって、ズボンの汚れを払った。後ろは見ないで駆け出した。
次に出会うのはきっと、戦場で。
(かじかんだ指の冷たさがよみがえる)
(鼻がツンとしたのも)
(熱を持った目も)
(寒いせい)
大丈夫、まだオワリはそこに無いから
俺かお前か、どちらかが消えるその時が来るまでは
だから、いつかきっと、また、どこかで、必ず
.