treasure novels U

□赤から紺へと変わる空
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いつもそうだね
拗ねると君は
僕の大事なもの…沙絢の事だけど…
隠すでしょ



でもね


その場所は決まって
同じだから


ゴメン
僕は安心してしまっているかもしれない





いつも先生は空ばかり見ていると
君は口を尖らせて言うくせに

自分を隠すのはいつも
学校の屋上


広い空が見える場所


部活に夢中になる僕を
フェンスにしがみついて
見てくれているって知ってるよ




暑い夏の日
陽炎が揺らめき
流す汗が僕の頭の中を真っ白にする

夏休みのグランドは
普段の授業の時より忙しくて
影が濃くて
強い日差しに目が眩む


僕は
選手たちに夢中になり
沙絢のことをおざなりにしてしまう……


そんな陸上バカの僕の事を
君が許してくれるのに
ついつい甘えてしまう



それでもいつしか時間は過ぎゆき
夕日を見ると我に帰るんだ

長く伸びた僕の影
長く長く待たせてしまった沙絢との時間



屋上の扉をそっと開く


…けれど その扉のギギィって音に


目を細めて君は
僕を見つめて
急に口尖らせ
プイっと外を見るね


「ごめんね」と言うと


「じゃあこっちに来て」って
言ってくれるから


僕はそぉっと君に近づく

ねえほら見てみて
影が重なった




「沙絢…暑かったでしょ?」

額をそっと親指で撫ぜると

「だって…他の所だと
駆 探せないでしょ?」

口を尖らせたまま
甘えた声で言う君は

ふふ 君は僕が最後には
折れるって…信じてるんだね


うん…その通りなんだけど
僕もね…知ってるんだよ…
僕が笑いながら謝れば

結局君は僕を許してくれる事


僕たちどこか…似ているのかもしれないね

尖らせた小さな口が可愛くて
屋上とはいえ学校だというのに
そっと口付けた


夕焼けに負けないくらい
真っ赤な顔した君が可愛くて


膨らませた頬を
そっと包んだ







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