treasure novels U

□あなたにラブコール♪
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―――大澤先生は朝が弱い。


私も弱い方だけど、大澤先生はハンパなく弱い。

先生と内緒のお付き合いを始めてから、私は自分でお弁当を作るようになった。

もちろん、大澤先生の分も合わせてふたり分のお弁当。

まだ慣れてなくてちょっぴり大変だけど、先生の為に彼女らしいことがしたい…。

そう思って始めたこと。

そしてもうひとつ。早起きついでに先生を電話で起こしてあげてるんだけど……

「せんせ?朝ですよー」

「うん…」

「起きて下さーい」

「うん…」

「遅刻しちゃいますよー」

「ん…」

「斉藤先生に怒られますよ?」

「…」

「大澤先生?」

「…」

あれっ?返事がない。

「もしかして…寝てませんか?」

「…………クー…」

やっぱり…!

携帯から聞こえてくる、大澤先生の安らかな寝息。

かわいくてかわいくて、胸がときめいてしまうから困ってしまう。

あぁ…。出来ることならこのままずっと聞いていたいなぁ…。

先生の寝息なら、何時間だって聞いていられるよ。

ハァ。でもダメだよね。

(………よし!)

私は心を鬼にしてある物に手を伸ばした。

先生、ごめんなさいっ!

カチッ☆

『ジリリリリリリリ!!!!!!!!』

私の目覚まし。

通称!『必●仕事人(←※時計です)』

「うわッ!?」

携帯の向こうで叫び声がこだまして…

『ドターン!』

…大澤先生は、あっけなく目覚めたのだった。


    ☆.。.:*・°


お昼休み。

いつものように、先生とふたりでお弁当を広げる。

歴史準備室の先生のイスの横には、この時間もうひとつのイスが用意される。

私専用のイス。

私しか使わない、私だけのもの。

それがとても『特別』に感じて、このイスに座るだけで先生を独り占めしてるみたいに思えちゃう。

幸せだな♪

「えヘヘっ♪」

「え?どうしたの?」

急に笑い出した私に驚く大澤先生。

し、しまった。いつの間にか口に出して笑ってた…。

「な、何でもないです…」

もう。私ってば…恥ずかしい…。

隠れるように、俯いてお弁当の卵焼きをパクッと頬張る。

すると、

「おいしいねっ♪」

隣から大澤先生の嬉しそうな声。

「?」

俯いていた顔が弾かれたように上がる。

「卵焼き。甘くてすごくおいしいよ」

ちょうど先生も卵焼きを食べていたらしく、ニコニコとこちらを見ていた。

先生の舌に合わせて作った甘い甘い卵焼き。

私もどちらかと言うと、甘い卵焼きの方が好きで。

大好きな人と同じ物が好きって、何だか嬉しい…。

先生の満面の笑顔にノックアウトされ、ほっぺたがほわほわと熱を帯びてくる。

落ち着きを取り戻そうと、先生が買ってくれたカフェオレをひとくち飲むと、

「僕にもちょーだい」

「あっ…」

流れるように私の手からペットボトルを取り去った。

私の動揺をよそに、何の迷いもなくそれに唇を寄せる先生。

(やだ…。意識しちゃうよ…)

不意の間接キスに、ついには全身の体温がカーッと上昇した。



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