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□あなたにラブコール♪
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私のカフェオレを無邪気に飲む先生の唇から視線が外せない。

いつも笑みを絶やさないきれいな形の唇。それを見ているだけでおかしな気持ちになってくるの…。

「うん、美味しい」

ニコニコッと咲きこぼれるかわいらしい笑顔から、私はいつもたくさんの幸せをもらっている。

「あ、結構減っちゃったね。ゴメン」

困ってアタフタしている表情にまでときめいてしまうのだから、この想いはかなり重症かもしれない。

怒った顔も、心配気な顔も、小早川先輩を真剣に指導する顔も、いつだって鮮やかに思い出せる。

私はどんな大澤先生も間違いなく大好きで、誰にも譲れないくらいこの想いは強大なのだ…。

そしてまた引き寄せられるように、カフェオレで濡れた唇に視線が流れ……

(キス…したい…な。先生が好き過ぎて…私…おかしくなっちゃったのかも…)

「沙絢?」

そんな状態でいきなり名前を呼ばれ、私の心臓は大きく跳ね上がった。

「は…はいっっ!!?」

「どうかしたの?」

不思議そうに首を傾げ、私の髪に大きな手が優しく触れる。

やだ!先生の唇ばかり見てたのバレた!?そ、それよりも先生の手が髪にっ!

焦りまくる私の手のひらからは汗がじっとりと滲み出す。

「なっ、なな何でもっっ!」

何でもという割には完全に挙動不審。

ああ…もうヤダ。自分が情けなくて自己嫌悪だよ…。

そんな私に、

「いつもありがとね、沙絢」

「え?」

先生の優しい言葉で、沈んでいた心はすぐに浮上。

「お弁当ももちろんだけど、朝起こしてもらってすごく助かってるんだよ?」

「ほ、ホントに…?」

「ホントだよ。今じゃ沙絢がいないと朝起きらんないんだからさ」

(わぁ…。何だか…彼女だって認めてもらえたみたいで嬉しい…)

幸せでくすぐったくて、私は先生の左腕にぎゅっとしがみ付いた。

「えへへ。でもそう思ってくれてるんだったら、ちゃんとすぐに起きて下さいね」

照れ隠しに、ちょっぴりかわいくないことを言ってみたり。

「ごめんね。でもさ、沙絢の声って、何だかすごくホッとしちゃうんだよね」

「え、もう…先生ったら…」

そこまでストレートに言われると、嬉しいんだけどすごく恥ずかしいな…。

先生はいつもそういったセリフをサラリと口にするから、やっぱり慣れてるのかな…?なんて思ってしまう。

考えるとやっぱり不安。ただでさえ先生と生徒という関係だし、周りからは大人と子供にしか見えないだろう。

卒業までが長過ぎて、不安ばかりが募る…。

「これで許してくれる?」

「へ?」

考え事をしていたせいで、出て来たのは間抜けな声。が、すぐに先生の温度を唇に感じた。

チュッ

(!!?)

啄むようなキスの後には、先生の爽やかな笑顔が目の前にあって…

「大好きだよ…」

…――クラクラする。

「せん…せ…」

チュッ

「ん…」

チュッ

何度も何度も触れる、先生の甘い唇。突然のキスの嵐に頭の中が白く霞んでゆく。

こんな風にされたら何も考えられなくなってしまうよ…。

私はいつも先生に敵わないんだ。でもね、私が大人になった時、少しは先生をドキドキされられるといいな…。

先生の唇を受け止めながら、私は頭の片隅で小さな幸せで満ちた未来像を膨らませていた。

唇が離れ、私は先生の胸に顔をうずめる。

「何を、考えてるの?」

「ん。早く大人になりたいなって…」

先生の隣が似合うような、素敵な大人の女性になりたい。

「急ぐ必要ないよ」

「う…ん。でも…」

やっぱり不安なの…。

私はその気持ちが伝わるように、先生の胸に頬を擦り寄せた。

「だってそれ以上沙絢が魅力的になっちゃったら、僕の心臓もたないかもしれないし」

「え?」

先生はグッと私の耳を胸に押し付けた。

(あ…)

「…聞こえる?」

「はい…」

あたたかな胸の中。私の耳に届いたのは、いつもよりも早く刻まれる先生の鼓動だった。

嬉しい…。先生も、ちゃんとドキドキしてくれてるんだ…。

「でも沙絢が大人になったら、電話じゃなくて直接起こしてもらえるんだよね。うーん、それもいいなぁ…」

「えっ?そ、それって…」

「ん?」

先生はニコッと笑って、私の左手を取り薬指にキスをした。

「あ…っ」

「約束だよ」

「先生…」

「それまではラブコールよろしく!」

その眩しい笑顔に、全身の血が波を打つ。





はい。先生。


輝くような日々は、きっと近い未来。


いつかその日が来るまで


大好きなあなたに、ずーっとラブコールをさせてね!


―END―
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