treasure novels

□ミリメートル
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…相変わらず逞しいな。


その笑顔からは到底似合わない身体つきに、ああ、康人くんだなあなんて、当然なことを今更ながら再確認する。



「…へへ…なんか、俺すっごい悪いことしてる気分ー」


楽しそうにイタズラっぽく言う康人くんはしばらくしてからようやく身体を解放してくれた。


お茶入れていくから先に部屋にあがってて?という私に、はーい。と素直に階段をのぼる康人くんの後ろ姿を確認してから、キッチンへ向かう。




お待たせ、とお盆を片手で支えながら扉を開けると、しゃがみ込んだ康人くんの背中が飛び込んできた。


「沙絢、コレ!」


ようやく私へと顔だけ向けた彼が指を指しているのは、さっき飾り付けを終えたクリスマスツリー。


「うん」


「これ、本物?」


「えへへ。そうだよ」


康人くんの隣に一緒にしゃがみこんで、目線を合わせた。
想像通り、目を輝かせてツリーを眺めてくれる康人くんに思わず口元が綻んでいく。


「わー!俺、クッキーが飾ってあるクリスマスツリーなんて初めて見た!!」


「うふふ。食べていいんだよ?」


「え!ほんとに?!」


よりいっそう目をキラキラさせた康人くんがツリーと私を交互に見た。


「うん。今朝焼いたから、食べられるよ」


「うわー!!すっげー!!」


こんなに喜んでくれるなんて。
早起きしてクッキーでオーナメントを作ったかいがあるな、と、ほっと胸を撫で下ろした。


もちろん康人くんの好きな苺のたくさん載ったケーキも作ったのだけれど。なんだかもっと彼をびっくり喜ばせたくて、昨日寝る前に思いついたのだ。


「ナイスアイディア、でしょ?」


うん!とこくこく首を縦に降る彼はそっとクッキーを手に取った。


「長靴!すっごいウマそう!」


いただきまーす!


そう言うとぱくり、と一口でクッキーを頬張る。


「うみゃい!!」


その笑顔に釣られるように私もクッキーに手を伸ばした。


「沙絢はすごいね。なんでもできるね!」


手を止めることなくツリーから一つずつ、割れないようにそっと糸を外してはそれを口に放り込んでいく康人くん。


「なんでもって、大げさだよ!」


「ううん、すごいよ。野球のルールもスコアのつけ方だってすぐに覚えちゃったしさ。料理も上手だし優しいし、それに可愛いし!」


屈託のない笑顔で言い切られて、恥ずかしさに言葉を失った。


「…そんな、ほ、褒め過ぎ!」


この人はいつもそう。康人くんの言葉に裏がないことはこれまでのつきあいで重々承知で、だから余計にそのパワーは絶大だ。


そんなことないよ、と引かない彼に観念して、ありがとうと言葉を返すとようやく納得したように頷いて、再び手と口を動かし始める




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