treasure novels

□ドンナ デアイデモ
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あの時、

わたしの生徒手帳を拾ったのが

高良先生じゃなかったら……

わたしは、ここには居なかったのかな?



ドンナ デアイデモ



「コーヒーお待たせしました」


自宅のリビングで
ソファーに座ってPCに向かう高良先生に、
カップを差し出した。

無言で受け取り、口にする

その姿を見てから。
ちょっとだけ間を空けて

同じソファーに腰掛けた。

自分用に持って来たカフェオレにゆっくり口をつけ

真面目な顔して仕事している高良先生を
盗み見る


綺麗な、顔
綺麗な、髪
綺麗な、目

手も
肌も
何もかもが綺麗。


……あの時、高良先生に会ってなかったら?


「───何だ」


ふいに低い声が耳に入る


「え……っ?あ……」

「ジロジロ見ていただろう、何の用だ?」


一段落ついたのか。
PCから目を反らし
手を離し
わたしを見る。

強い、瞳

その瞳に射抜かれると
勝手に体が動かなくなる。


「……用と、いうか……」


言い淀むわたしを見て
ニヤリと口角を上げて笑った


「見蕩れてたのか?俺に」


───図星

ズルいと思いながらも
本当の事を言い当てられて
恥ずかしくて。

顔を伏せ……

たのに。


「見蕩れながら、何を考えていた?」


顎を掴まれ、高良先生の方を向かせられる。
綺麗な顔が
目の前にある……


「……わたしの生徒手帳を拾ったのが、違う先生だったら。
今、わたしは───」


言いかけた口が
高良先生の唇で
塞がれた

『───ここに居なかった?』

飲み込まれた言葉
聞く事すら
拒否された。


息が出来ないくらいに塞がれた唇が

やっと解放される


「関係ないな。お前は最初から俺の物だ」


いつもの自信満々の笑顔で── 一瞬だけ切なそうに歪んだけど──高良先生は答えた。

ああそうか。
出会いがそこじゃなくても

わたしは

高良先生に


囚われる───



「お前は黙って。
俺だけを見て、俺だけを考えていればいい……」


重なる唇から伝わる想い

伝えたい想い



───どんな出会いをしても

わたしは

あなたを好きになる───






fin



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