treasure novels

□アナタニ アイタイカラ
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あなたがわたしを待っててくれた

それが

すごく嬉しかったの───


アナタニ アイタイカラ




コンコン

ノックされた英語科教官室


「はぁい、どうぞー」


手が離せなくて、ドアの方を向きもせずに
声をかけた

ガチャ…っ

……パタン

カチャン───


ドアが開いて閉じた音。
それに

鍵のかかる音

「失礼します」の言葉もないし…と
訝し気に思い、座ったまま振り返る

目の前に見えたのは
黒いネクタイと白いシャツ


「見っけ〜…」

「きゃっ……!」


言葉と同時に
頭を胸に押し付ける様に
抱きしめられた

触れたシャツもネクタイも
冷えきっている


「冷た……っ、深國くんっどこに居たのっ!?」


慌てて軽く、押し返す。
顔を上げて見えた表情は

穏やかな笑顔───


「……深國くん?」

「ずっとアンタ来るの待ってたんだけど……待てなくて来ちゃった〜…」


フフっと笑みを零し
再度強く抱きしめられた

服の冷たさと
顔の穏やかさのギャップに
戸惑って

でも

愛しくて

ゆっくり背中に腕を回し
抱きしめた

しばらく無言で
二人抱きしめあって

ゆっくりと深國くんが動いた


顔を上げ
わたしを見る


「ねえ……あっためてよ………」


わたしの頬に
冷たい手のひらが添えられる

瞬間

冷たい唇が押し付けられた


「───っ!?」


触れた唇の冷たさと
漏れる吐息の熱さに

何かが

おかしくなりそう……




「屋上で待ってんのに、いつもの時間になっても来ないからさ〜……」


触れていた唇が離されて──離れたときは熱くなっていたけれど──深國くんが小さく言葉を紡ぐ


「……寂しかった?」

「───……かもね〜?」


少し照れながら

少し笑みをもらして

もう一度


キスを………



───待っていてくれてありがとう

わたしも……

あなたに会いたかったんだ───




fin



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