東方獣戦争
□【吸血鬼ダー】
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「ダーッ! 皆俺を覚えてるかぁ、俺は覚えてるぞ。
今日の獣戦争はホラーアクション、貞子がガンカタするぜ! あ、ウソウソ。てことで東方獣戦争の始まりダーッ!
あ、俺はメタルスダイノボットだからな?」
【吸血鬼ダー】
紅魔館。霧の湖の畔に存在する洋館。
窓の少ないこの館は地下にも部屋が存在し、外見以上の広さを持っている。
住み込みメイドも多く、役には立たないが質よりも量らしい。
そして、此処で働いてる者。住んでいる者達は下手な妖怪よりも強く。
門番、メイド長。地下にある郷1番の図書館の主はまだしも。
紅魔館の主と、その妹は特に。彼女達に挑むのは無謀に等しいのだ……。
しかし、そんなある日の真夜中。鋭い金属音が、静寂を保つ館内で激しく響いていた。
「ダーッ!」
「あはは!」
大きな体格、それでいて骨のようなフォルムを持つ恐竜は素早い動きで爪を振り下ろし……。
その標的である少女は、手にした黒い槍で受け止める。
「あはははは、すごい! すごいよダーちゃん」
「お前こそ、なかなかやるじゃねぇか。ダーッ」
恐竜はすぐに彼女から離れ、煉瓦造りの壁へ足の爪を引っ掛けて駆け回る。
接近戦を主体とする彼としてはそこから再び距離を詰めて攻めに転じるのだが、相手をしている少女にその戦法は至難であった。
理由は、視界を覆い尽くすように降り注ぐ弾の雨である。
よほど室内とは思えない程の破壊力と量を有する彼女の弾幕を前にすれば、自ずと脚力を最大限に発揮した方法を取らねばならなくなり。
恐竜は降り注ぐ弾を避けたり、爪で弾くことに着眼点を置いて壁を走っていた。
「俺は弾上がり決死隊じゃねんだよ、ダーッ」
「あはははははは、もっと楽しもうよダーちゃん!」
狂ったように笑い続ける少女、その眼に宿る瞳は猫科の猛獣が獲物を捉えているように輝かせて恐竜を追いかけていた。
少女の名はフランドール・スカーレット。通称”フラン”。
紅魔館の主、レミリアを姉に持ち。彼女の判断でフランは地下に設けられた特製の部屋に住み。そこで退屈な日々を暮らしていた。
勿論、代償は大く……ほの暗く、広い部屋に永い間過ごしていた彼女の心にはあたたかな光が差し込む事がない。
ある異変の時に遊んでくれた二人の少女以外、フランと渡り合える者が居なかったのだ。
しかし、渡り合える存在といってもいつも遊びに来てくれる訳ではなく。二人共、自分の家があって友人達(?)がいる。
たまに紅魔館にもいる皆が相手をしてくれるものの、途中でリタイアするのがほとんど。無論、フランの心の曇りはなかなか晴れる事はなく。
部屋の隅で膝を抱えて座り込み、少女は虚空を見つめる日々を暮らしていた。
そんなある日だった……。
何も起きない、何も現れない。寂しさには慣れたつもりでも、やはり耐えられないものもあるのか。
フランが頑丈な壁にもたれて座り込んでいた時。
突然、まばゆい光に包まれた恐竜の眼の前に現れ。いつも通りの退屈になりそうだったフランの今日を打ち砕き。
恐竜は眼を覚ました途端、身体に宿る戦将の狂気と内なるビーストの本能を彼女目掛けて解き放ってから今に至る。
「ファイト、ダッダ、頑張れ、ダッダ。1、2、ダッダ」
「あはははははは、もっと避けてみせてよ!」
全く疲れも見せない、フランの笑顔。
頭上から舞い降りる弾の嵐を恐竜はマラソンをするときのような掛け声を発しながら避け続ける……。
無差別に、ただ破壊する為の力任せ。数の暴力は近距離を得意とする彼にはやはり相性が悪い。
しかし、先程。素早くメタルスクローを彼女に繰り出した時に長い尾を操り、素早くホログラム発生装置を伏せた後、注意を逸らすべく恐竜は再び距離を取って回避を続けていた。
時々様子を伺えば、既に少女の視線はこちらを捉えて弾幕を形勢している。
右に左に、螺旋を描くように動き回る恐竜の姿を追っている……それは完全に集中した眼つきであった。そこで攻撃に転じる機会を察知し、彼は動きだす。
「ダーッ。それじゃ、こっから”となりのダイちゃん”の大活躍を見せるとするか……テクマクマヤコン、影分身の術ダー」
少女と同じ紅い眼にその姿を映し、恐竜は効力の無い呪文アドリブを呟く。
直後、彼女の周りに2匹の恐竜が現れ。フランは全く同じ白銀のフォルムを持つ恐竜が尻尾を振りながら自分を見下ろしている光景に驚いた表情で彼らを見遣った。
「えっ!? なんでダーちゃんがこっちにいるの……」
「ダー」
「ダー」
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Mダイ「どうも。野原ひろしです、妻はみさえ。息子はしんのすけ、娘はひまわり。ペットはシロがいます……あ、台本間違えた」
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