東方獣戦争
□番外短編【生者の来訪】
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「あれ、俺達死んでないのに来ちゃったよ幻想郷」
「あー、なんかサイバトロン分が足らないからってディレクターが言ってた」
「へー、じゃあ俺達も妖怪達に会えるじゃん?」
「でもチー坊、最近まで妖怪やってたよね。黄色い服きたねずみの」
「私語は慎みなさい! 校長先生怒りますよ、コラァー!」
「バーロー、何怒ってんだよ。んじゃぁ、東方獣戦争の始まり始まり」
【生者の来訪】
のどかな田園風景の中に存在する屋敷。
近くには人里があり、使いに出かけるには最適な場所である。しかし、だからといって幻想郷ではない……。
マヨイガ、幻想郷でもなければ外界でもないそこには幻想郷を管理する境界の妖怪とその式神達が、一顧の家族のように居を置いてた。
この家の敷居を跨ぐには、迷い込んでしまったようによほどの縁が無ければ無理な話である。
そして、幸いにもその縁に巡り会った者が主の見下ろす先屋敷の中庭。
そこには二匹の動物がちょこんとお座りしながら辺りを見回していたのだ。
「ねずみ妖怪と化け猫?」
庭に差し込まれた陽をピカピカと反射させる珍しい外見。珍しい身体を持つねずみと猫は……共に視線を合わせた主よりも大きな体格を持ち、その姿は寝ぼけていた彼女の頭を起こしてそう呟かせた。
「ん、うわ。18禁ゲームに出てきそうなパツキンねーちゃん」
「え、坂本金髪? 桜中の?」
呟いた声に気付き、二匹はいろいろと聞き捨てならない発言をしながらも顔を向け。
見ていた妖怪は呆れが混じったため息をついてしまう。
また、退屈しなさそうなのが迷い込んだわね……。
と、しかし。そう思っても確認しなければならない事もあった。
「さて、貴方達はどうして私の中庭に居るのかしら?」
「スタッフに呼ばれたから」
「なら、仕方ないわね」
ねずみからの返答に妖怪は頷くしかない、というよりまともな会話をしても自分に勝ち目がないことを何となく彼女は納得していた。
暖簾に腕押しという外界の諺が彼らにちょうど当て嵌まる……。
「あ、オイラ。ラットル。こっちの猫はチータスっていうんだけど此処はどこ?」
「幻想郷よ」
即答された地名に、ラットル達は首を大きく傾げた。勿論、知るはずのない地に二人は頭を悩ませ出す。
メガトロンとの戦いに終止符を打ち、その後復興されたセイバートロン星で安穏な日々を送っていた……という設定だったが。
スタッフが巧みに先導した事もあり、気付けば二人は”幻想郷”とやらにやってきているのだ。
「スタッフ何も言ってくれなかったじゃん、もう校長先生知りませんよ!」
「先生、僕転校生です」
「何を言ってるんだ、野比くんコラァー!」
たまらず声をあげたチータス、アドリブをはじめるラットル。
迷い込んだという割に困った顔を見せない。むしろ、賑やかに話をする二匹の姿は妖怪にまで何かを運んでいく。まるで慣れ親しんだ幻想郷の住人のよう。
そんな楽しさを分け与えてくれる二人に妖怪は自然と頬が緩み。彼らへと名を明かした。
「私は八雲紫よ」
「え、紫ババァ?」
「違う、紫!」
「紫ババァだろ!」
「紫よ!」
「紫じゃん!」
「紫ババァよ!」
「紫だろ!」
なんと不毛な争いをしているのか紫はそう思いながらも聞き捨てならない発言に怒りを覚え、チータス達と口論していた。
しかし、彼女はそこでようやく気付く。
台詞がいつのまにか入れ代わっていることに……。
「紫ババァ……あ」
「やーい、自分で言ってんの」
「こいつバカだよ、チー坊」
「うえぇ、ヘキサゴン? ゆかんぬ?」
「バカ妖怪」
「うるさい! 古今東西、バカって言った方がバカなのよ!」
その後、買い物から帰宅した彼女の式神は主が猫とねずみに弄られているという珍妙な光景を目の当たりにした。
続く
エンディング
チー「ねえねぇ、紫は妖怪なんだよね?」
紫「フフ、そうよ。境界のね」
ラッ「じゃあさ、プリンとブリュレの境界は何処?」
紫「えっ!? それはそのう……どこかしら」
チー「えー、境界なのに解んないのぉ? それでも境界の妖怪?」
ラッ「こいつ解んないんだよ、チー坊」
紫「わ、解るわよ! えと」
ラッ「あ、すきまからプリンとブリュレ出した!」
チー「え、四次元ポケット? ゆかえもん!?」
紫「ペコペコン、ぷりんとぶりゅれ〜って、ちがーう!」
燈「ゆ、紫様が手玉に取られてる……」
藍「見てはダメだ燈、あれは夢だ!」
ラッ「いんじゅーすぺかぁ〜」
チー「寝る場所は押し入れの二段目? おやつはドラ焼きに牛乳?」
紫「そうよ、足元にはすきまクズカゴが−−ってだから違うわよ!? ドラ焼きに牛乳はあうけど」