東方獣戦争
□【ウヒャヒャとブン屋と河童がいた夏】
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タラ「えー、今日は妖怪の山から犬走椛ちゃんがスタジオに来てくれましたっス」
椛「出番がないからやってきました椛です、私。わんわんに会いたかったんです……握手良いですか?」
タラ「もちろんOKっスよ」
文「あれ、タラちゃん天狗差別?」
※
「あれ、文が来てない……」
その頃、川を捜索し終え。天狗と別れた場所に戻ってきていた。落ち合おうと行って再びやって来たのだが、彼女の姿は地上はおろか空にも見えない。
戻ってくるのが遅れているのか……いや、鴉天狗であり。幻想郷でもずば抜けた移動速度の文に限ってそれは無いと言える。
ならばいったい……。少し考え込んだところでにとりはある答えに行き着く。
「まさか、蜘蛛と弾幕ごっこなら行かなきゃ!」
幻想郷のルールである弾幕ごっこは観戦していても芸術のように綺麗なもので、やっていると聞けば心得がある者やバトル好きならすぐに駆け付る。
にとりもまたその一人であった。
焦る気持ちを抑えきれず、駆け足で文が居るであろう山へと向かう。
文の事だから手加減をして相手をボコスカしてるに違いない。疑うことなく、一人で確信して。
飛び出た木の根を傷つけぬように、転ばぬように飛び越え。木々が避けて行くように間をすりぬけて走る。
そして、ついににとりは念願の相手と対面することになった。
「文! 化け蜘蛛見つかっ……たの?」
「だーから、あたしはタランスって言ってんスよ」
「いーえ、わんわんです! [妖怪の山にわんわんあり!]次の一面はコレで決定です」
あの射命丸文が捕まっている予想以上の展開ににとりの時間が停止してしまう。いや、それよりも彼女の眼前にいる化け蜘蛛に河童の意識は奪われていた。
(何……あれ?)
紫、黒、緑の暗い色。輝く身体の大蜘蛛。
あまりの大きさに、大妖怪を前にしたように肝が冷えそうになったが。
「解放するから止めてほしいっス、あたしはわんわんじゃないっス」
「じゃあ、いないないばぁってやってみて下さいよ」
「いないないばぁっ」
「やっぱり、わんわんですね」
「違うってば!」
緊張するであろう場面が音を立てて壊れながら、彼らの会話の内容に思わずずっこけてしまう。
いったい何の話をしているのか……しかし。
蜘蛛の声を聞いて、にとりはある番組を思い出した。
(この声まさか……地図描くアレの人!?)
「あの、探険ぼくらの町で出てたよね!」
駆け寄り、思わず蜘蛛の手らしき一本の脚を取って笑顔で尋ねると。
「ええ、出てましたとも」
「ちょっ、何でそっちは認めるんですか!?」
良い声色で認めたタランスに不平そうに声をあげる文、そんな彼女に彼は仕方なさそうにため息を付き。
「メタルスタランス、変身っス!」
と掛け声を出して。小さく飛び上がり、腹である場所から顔が現れ。蜘蛛からロボットモードに変身し、タランスはそこで反論する。
「あのね、あんな良い子の眩しい笑顔を見て耐えられないっスよ、もー」
「……」
「……」
「あ、あれ?」
突然、黙り込む二人の少女。一体どうしたのか、とタランスは首を傾げる。
信じられないものを見るような、驚愕に染まった表情で固まっていた。
鴉天狗はわんわんと思っていた蜘蛛が変形し、ロボになったことに。
そして、河童は彼がロボットモードに姿を変えたと同時に文を縛る蜘蛛糸が視認出来るようになったこと。
それぞれがタランスにたいするイメージが最高頂に達していた。
「あ、あのー」
「「タランスさんっ!?」」
「ひぃっ!」
心配そうに声をかけたタランスに、突然二人が彼の名を語気を強めて呼び。たまらず蜘蛛は悲鳴をあげる。
「ちょっと詳しく話が聞きたいんだけど私の家に来てくれ「ない!?」ませんか!?」
余りに真剣な表情で尋ねる二人に、恐怖を抱き。タランスはコクコクと頷いて文を罠から解放した。
生前、タイガーファルコンから飛び出したエイリアンにお仕置きをされたからか。何となくこうゆう場合は逆らっちゃいけないんだと強く思うようになっていた。
「まあ、台本がそうゆう流れっスからね。とゆうか、あたしはどっちに行きゃ良いんスか?」
「……」
「……」
「「ジャーンケーン」」
その後、川辺で嬉しそうな表情でタランスを家に招くにとりが目撃され。
じゃんけんで敗れた文は「明日必ず取材させてもらいますから!」とタランスに告げ、自宅でブン屋魂を燃やしながら原稿を作成していたそうな。
続く
次回予告
にとり「そういえばなんで私達、タラちゃんに気付けなかったんだろ」
文「そーいえばそうですね、説明キボンヌですタラちゃん」
タラ「ウヒャヒャヒャ。それはその……アレっス。また今度話すって事で」
に&文「ダメっス」
タラ「もう、マネしないでほしいっス! 次回【顔あげてごっつんこぅ!】ようやく悪役から解放されたのになんで妖怪とか訳の解んない奴らに拘束されるんスかね……」
にとり「何気なくヒドっ、それより悪役って?」
タラ「そうっス、あたしバリバリ悪役だったんスよ。えーと……ユニクロのスポンサーとか」
文「いや、それはそれで凄いですよ多分」
タラ「あ、やべ。あたし、大事なこと忘れてるなぁ……笑ってごまかしちゃえ、ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」