東方獣戦争

□【気合いじゃ、ちょっきんな!】
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※アイキャッチ
妹紅「夢中で見てくれたらぁ燃やす」

ラン「幻想レオパレス21の提供じゃ、ちょっきんな」


 あれからどれぐらいの時間が流れただろう……。さほど長くもない時間、竹林の中で飛び交う炎とライフルやガトリングから放たれる弾丸は荒々しくも派手な弾幕を成していた。
 だが、砲火を交えていた二人に時間は関係ない。永い時不死身の命で朽ちる事なく生きてきた妹紅とランページには特にそれが当て嵌まる。

 疲れを見せないまま、闘いを続けていたが。互いの顔にライフルと炎を突き付けたところで両者は動きを止めた。

「決着、つきぁせんのう……どがぁするんじゃ。このままわしがちょっきんすればお前はバーンじゃ」

「それは私の台詞……このまま焼き蟹にしても良いんだからね」

 憎まれ口を叩くが、二人の表情はどこか最初と違っていた。
 それは新たに全力でぶつけ合える存在を見つけ。妹紅とランページは互いを認めていたから……。

 かたや、性悪姫しかおもいのたけをぶつけ合う相手が居なかった少女。
 かたや、エイしか全力で闘える相手がいなかったトランスフォーマー。

 自分達にはどこか通じ合うものがある……。
 何故か解らないが。二人は互いにそう感じていたのだ。


「お前、不死身か?」
「ランページこそ、私の炎浴びてすぐに回復できるなんてね」

 炎を消し、ライフルを納めて。闘志が薄らいでしまった蟹と少女は地面に腰を降ろす。
 そこでようやく一息をつく事が出来、妹紅の口からは自然とため息が出ていた。
 それは疲労によるのか、彼女の表情がどこか悲しさを孕んでいる……。

「あんた……イロイロ経験してきたんでしょ」

「……まあ、こんな身体なんは。そうゆうふうに造られたからのぅ」


 造られた。気になる発言をした彼に、妹紅は表情を険しくして話を続ける。
 一体、どう言う意味なのか……と。

「それって」

「わしは、不死身という存在を造るために生まれた……そのために色んな実験をされたんじゃ。火に包まれもした、銃で蜂の巣にもされた、剣で切り刻まれもしたわ。
 ようはわしは闘う為だけに造られたようなもんじゃ、ちょっきんな」

「何よそれ!!」

 全てを話したところで妹紅は怒声を上げた。
 ふとした事で不老不死となった命を持ち、泣いても怒りを放っても。知り合った年下の者が先に逝った……。不死ということがどれほど辛いものか彼女には痛い程理解出来てしまい。
 不死身という実験をする為にランページを生んだ者達に激しい憎悪を覚える。
 脈打つ熱が、彼らに対する怒りなのだと感じていた。

「ま、結局は抜け出してそいつら全員。わしが殺したわ」

 当然かもね。と鼻で笑い。次に妹紅は自分の番として語り始める……。

 自分が不老不死となったいきさつ、それから自分が歩んできた孤独の道。
 不死鳥の力を得てから、幻想郷に迷い込み。此処でようやく心を許せるに値する友に巡り逢えた事。
 ようやく怒りをぶつける相手に再会した事を藤原妹紅という人間の全てを彼女は晒す。

 そして、全部話した頃……ランページは。自分にとっての最初の友を思い出していた。
 自分と似て、強大な力を持っていたが。不完全な身体だった友を。

じゃが、結局はわしが自分で友達を。

「あ……」

 ふと、ぼんやりと竹に覆われている空を見上げていた彼に妹紅は気付き。踏み込んではいけない場所を踏んでいた自分を強く恥じ、目を逸らす。

「ご、ごめん。なんか思い出させちゃって……」

「ちょっきんな……いや、わしが勝手に思い出しただけじゃ。気にすんなや」

 気まずい空気が流れ、蟹の言葉にどう返せば良いのか……。妹紅はぼうっと眼に入った竹林の風景を眺めながらおもいあぐねる。

 そして、そこで彼がここ最近していた事を思い出す。

「そういえば……返り討ちは良いけど、精神に傷を負わせるのはやり過ぎよ。言っとくけどあんた、そこらの妖怪より遥かに強いわ」

「いや、わし悪者じゃし」

 鼻の先まで接近し、注意をする妹紅に思わずランページは後退りしながら訳を話すが認めないのか、厳しい表情をしている。
 これほど強いのだからもっと何かに使えないか、思案していた彼女はそこである考えが出た。


「ランページ、あんた自警団しない?」

「自警団のぅ……」

 予想していなかった話に少し驚いたものの。幻想郷に迷い込んでから何もする事なく。
 喧嘩をふっかけてきた妖怪達を返り討ちにしていたランページ。
 しかし、挑んで来た者ほとんどが太刀打ち出来ずにトラウマを植え付け返す程度。

 強い相手がおらず、やきもきした毎日を送っていたが。妹紅の提案に乗れば、彼女と闘いたい時に闘え。
 さらに彼女が言っていた性悪姫とも闘えるのでは……と。此処に来て退屈な生活を送っていた彼にはこの上ない名案に聞こえ、次第に心が躍っていた。

「ちょっきん、な! その話乗らせてもらうわ」

「なら決まりね」

 竹林の中、不死の二人は手を取り合う。
 此処に妹紅は新しく相棒を得、自警団は強化されたのだった……。

「のう、妹紅」

「なによ?」

「さっきから、ちーっと顔が近い気がするんじゃがの」

 ランページに言われ、改めて距離が近い事に気が付き。慌てて飛びのくが、既に彼女は風呂でのぼせたように耳まで赤く沸騰しており。
 俯く妹紅の背からは、炎の翼が現れる。

 そして、顔を上げた彼女の眼は鋭くランページを捉え。スペカを高く掲げた……。

蓬莱「凱風快晴フジヤマヴォルケイノ」


「せ、責任とれぇぇっ!!」

「意味が解らんわ! わ、ちょ、ちょっとぉ……ちょっきんなぁぁぁ!!」

 かつて地球の地で見たことのある火山爆発を思い出しながら、彼女から吐き出された火球に消えるランページであった。


続く

次回予告

ラン「あっつ、あっち。熱くてちょっきんなじゃ」

妹紅「あ、ああああ、あれはランページがさっさと言わないからよ!」

ラン「おーおー、そりゃわしが悪かったのぉ。次回【吸血鬼ダー】次も見てくれや、ちょっきんなーじゃ!
 ちなみに言うと、わしも炎を操れるんじゃ」

妹紅「へー、じゃあ。どんなのかやってよ」

ラン「ちょっきんな、邪王……炎殺、黒龍破ぁぁぁぁぁ!!」

妹紅「か、かっこいいじゃない。私も使って良い?」

ラン「語尾にちょっきんなを使たら考えてもええぞ」

妹紅「……ちょっきんなぁぁ! あれ、結構楽しいわコレ」
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