東方獣戦争
□【吸血鬼ダー】
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フラン「私、野原ひまわりです」
Mダイ「うちのひまわり、まだ喋らないから」
※
心が昂揚していた……。突然現れた白銀の骨を持つ恐竜と遊んでいると、フランは自分の脈打つ鼓動の音が強く聞こえ。さらに昂ぶっていた。
まったく弾に当たらない、すべて避け続けている反射神経の高さは美鈴に匹敵し。弾を弾き、冷静な意志で接近してくる速さは咲夜に等しい。
釣り上がった眼はまるで姉のように鋭く自分を見据えている。
そして、今また自分の意表を付くやり方がパチュリーのようであった。
傍にそびえ立つ恐竜達に、もっと、もっと楽しませてほしい、そう期待しながらフランは嬉しそうに槍を振るう。
「ダァン」
「馬鹿が見るぅ、豚のケーツー」
槍が彼らの身体に直撃した……しかし。うずくまって倒れる訳でもない。
二対の恐竜は、まるで蜃気楼のように歪んだ映像をフランに見せて薄らいでいく……すると。
逃げ回っていた彼の事を忘れ、気が逸れていたところに鋼鉄の爪が唸りをあげて振り下ろされた。
「メタルスダイノボット、変身! ダアッ?」
だが……。
機械の身体を持った人型へと姿を変わったダイノボットの脚が床を踏み締めた時、小さな女の子の姿はそこに無い。
「あは、遅いよダーちゃん……」
スパークが底冷えするような、少女の声が背後から聞こえ。ダイノボットは尾で彼女を振り払おうと力を込めるが……それよりも強い力が彼の尾の動き抑えて掴む。
しまった。そう言いたかったダイノボットの身体は少女が体を捻らせると共に浮き上がり、さらに急激な力が足されて回り始めた。
「今日も回っております、ダアアアアァァァァーッ!」
直ぐに枷は外され、彼の大きな身体は自然と煉瓦の壁へ放たれる。
図書館に居る館主によって設計されたフランの部屋は魔力も手伝って異常なほど硬く。
ちょっとやそっとのスペカでは破れはしない(火力重視を除く)。
そんな部屋の壁にたたき付けられようものならば細胞全てが崩壊するだろう。
それがフランの手によってなら、尚更の事。
轟音と共に、激突した衝撃でめくれた装甲。バラバラに砕けたメタルスボディは蝋燭の火を反射し、怪しげな光を放って少女の足元に転がった。
「あはは、私の勝ちだねダーちゃん!」
落ちてきたダイノボットの頭を拾い上げて、楽しそうに声をかける。しかし……もう、先程のように愛嬌のある口癖が返ってくる事はなく。
次第にフランから笑顔は陰りを見せ、同時に弾幕の円陣は消える。
あ……。
先程、手を放してしまった時に感じた手応えを、少女は自分の掌を見下ろして思い出す。
過ぎた力、自分自身がもつ能力の強大さ……。
何時も、言われてたはずなのに……。
美鈴と、咲夜とを相手に遊んで貰った時。やり過ぎて二人に大怪我を負わせてしまい、姉から怒られ。何故自分が怒られなくてはならないのか理解出来ずに反発し。
館を全壊してしまいそうな程の喧嘩を繰り広げた。
『私のせいでもある……でも、貴女もそろそろ自覚をしなさい。貴女の力が咲夜達からすればどれほど強大かをね』
喧嘩が終わった後に言われた姉の言葉が頭を駆け巡り……フランの眼から熱い雫が溢れ、ダイノボットの顔に零れ落ちる。
新しい友達になれるかもしれなかった彼へ謝罪の想いが胸を支配し、震える腕が強く頭を抱きしめた直後。
「ダー、何泣いてんだ?」
「……えっ!?」
自分へとかけられた声、驚いた表情で彼女が腕に抱いた頭に視線を戻すと。彼は生きてフランへと言葉を発したのだ。
そして、足元で転がっていたジャンクは。
砕けていない胴体、その中心から伸びた光がかき集め。一瞬の内に修復し……少女が抱えていた頭も取り、元の場所へとはめ込むと。メタルスダイノボットが完全な復活を遂げる。
「ダー、自分の身体を自分で直せるんだにょろん……」
両手の爪を擦り、復活した事を示し。自分より遥かに小さいフランへと向き直った時……彼女の流す涙がダイノボットの戦意を消しさり。
自然と彼女へ声をかけていた。
「さて、どうしたんだよ?」
「ともだち、ダーちゃんとなりたいって思って遊んでたのに……私。ダーちゃんを壊しちゃったから……さっきは、ごめんなさい。
私、みたい、な……のと。ともだちなんて、やだよね?」
涙を浮かべながら微笑む少女のその顔は、どこか哀しさがあり。
考えるよりも先にダイノボットの身体は動いていた。
どうして、涙を流すのか。どうして謝ったのか。
そんな小難しい事を考えるのが彼には面倒で仕方がないのだ。
とりあえずは友達になりたいと告げたこの娘は放っていてはいけない。誰しも心から笑う必要が……心のビタミンが要る。
直感的にそう思った時には彼女の、眼に溜まった涙を爪で掬い。そこに熱さを覚えた。
熱い……これが涙って奴か。
微かに蘇る、太古の地球で見かけた猿の涙……。
メガトロンに人質として捕われ、チャージされたビームが妖しい輝きを放つ銃口を突き付けられた時に見た恐怖の涙……。
許せないと共に戦士として怒りを覚えた。
そして、今また自分が感じた熱さも恐怖の涙なのだろうか……言い知れぬ孤独を感じ。ダイノボットは少女の小さな身体を抱え上げ、肩へと乗せた。
「俺は小難しいことはわからねぇ、ダー……。けどよぉ、これだけは解るんだよ。
無理せず、これから頑張っていけば良い。
お嬢ちゃん一人でわかんなかったら頼りゃ良い、一人じゃないはずだよな?」
先程、闘っていた時とは打って変わった彼の声色にフランは一瞬驚いた表情を見せるが。すぐに落ち着いたものになっていき、質問に強く頷く。
威圧感のある顔は、見る者によっては怖さを感じさせる……しかし。少女の双眸にはとても優しい表情に映っていた。
「ま、友達になる前にやることあるよな。ダーッ」
「え……」
「ダー、何ぼーっとしてんだよ。名前だろ、名前。まだ俺はダーちゃんってしか呼ばれてねぇからな、ダー。
俺の名前はメタルスダイノボット、ダーッ」
腕を組んで考え込む少女に恐竜は気恥ずかしいそうに爪で頬を掻き、初めて名を明かすと。
少女は嬉しそうに彼の名を反駁した……とても、大切な宝物を箱にしまって隠すように。
「ダイノボット、ダイノボット……。
ダイちゃん。私はね、フランドール・スカーレット。
フランって呼んで」
「フラン……か。かわいらしくて、よく似合ってるぜフラン。ダー」
内心、ダイノボットは名を交換した少女に頭が下がる想いだった。
先程フランが自分をバラバラにし、頭を抱きしめてくれた時。頬にうけたあたたかな雫がスパークに沸き上がっていた戦将の狂気を抑制し。
さらに、眼に映った彼女の哀しげな表情と脳裏に浮かぶ相棒の存在がクローンの自分に。戦士としての誇りを彼のスパークで眼を覚まさせたのだ。
ダーッ、俺はフランに感謝しないといけねぇ。こいつのおかげで戦闘狂から立ち戻れたんだからな。
「フランよぉ」
「なに、ダイちゃん?」
「ありがとよ」
「ううん、私もダイちゃんの励ましてくれた言葉が、嬉しかったもん。
ありがとうダイちゃん」
メタルスダイノボットへ礼を述べたフランの笑顔はどこか晴れやかさがあった。
それは彼という安寧の場所が増えた事や。新しい友への信頼の表れかもしれない。
引き合わされたように出会ったトランスフォーマーとヴァンパイアは、互いの狂気を抑える事が出来るのであろうか……。
物影から心配しながらも紅魔館の主は二人に期待した眼差しを送っていた。
「妙な運命が見えたと思ったら、あの子のあんな笑顔を引き出す骨トカゲなんて……興味深いわね。
メタルスダイノボットか……お茶に招いてみようかしら」
続く
次回予告
フラン「ねー、ダイちゃん」
Mダイ「なんだフラン」
フラン「あのね、私とお姉様って吸血鬼なんだよ」
レミリア「フフン」
Mダイ「へー」
レミリア「ちょっとー、なんかもうちょっとリアクションあるでしょ!?」
フラン「そーだそーだ!」
Mダイ「リアクションって。俺ぁ、骨だぞん?! 次回【オリジナルダー】次は俺のオリジナルが活躍するから見てくれよな。
じゃあ、お前らと怪物くんどっちがすげぇんだよ。ダー」
レミリア「うっ、そんな大御所出さないでよ!」
フラン「勝てるわけないじゃない!」
Mダイ「イテテ、殴るな乗るな。あ、こらソコ。鞍付けて乗るんじゃねぇよ、ダーッ」
レ&フ「行けヨッシー」
Mダイ「ダー、ヨッシーじゃねぇよ!」