お話
□鼓動
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「どうしたんだ?お兄さんと遊びたくなった?」
気がついたら、アイツの左胸に自分の手のひらを当てていた。
「……」
とっさに言葉が出ないオレの事は、眼中にないように言葉を紡ぐアイツ。
「じゃあさ、お医者さんごっこ………しようか?」
オレの瞳を覗き込み、言葉を紡ぐ。
「最初に胸の音、聴いてもらおうかな」
有無を云わせぬ力で、オレの耳を自分の左胸に押し当てる。
どうして、聴きたくなったのか解らない。
規則正しい音を聴いて、安心している自分が不思議でならない。
「どうですか?センセイ」
ゆっくり耳を離し、アイツの瞳を見る。
吸い込まれそうな瞳。
オレの不安を取り除いてくれる瞳の持ち主の鼓動を、限りなく愛おしく思った。
オレの鼓動を、アイツは愛おしく思ってくれるのだろうか?
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