お宝

□還る場所
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捕虜になってから、“彼”は夜毎夢の中に現れた。
『おっさん』
至極失礼な名称で、だが思わずドキリとする様な微笑みで。何処か見覚えのあるパイロット控え室らしい部屋や、戦艦内らしい無個性な個室の中で“彼”は俺を呼ぶ。
『―――――』
そんな“彼”の名前を、俺もまた夢の中で口にする。なのに何故か、目覚めた時には顔も名前も思い出せなくて。
『今日も生きて帰ろうぜ』
夢の最後に必ず彼が口にする言葉と紫の瞳だけが、何時までも俺の中に残っていた。


今ならば分かる。あれは今目の前にいる“彼”なのだと。
「…ディアッカ」
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